内容説明
高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。「その栞は自分のものだ」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。ベストセラー『本と鍵の季節』(図書委員シリーズ)待望の続編! 直木賞受賞第一作。
目次
第一章 栞と花
第二章 栞と毒
第三章 栞と噂
第四章 栞と嘘
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
597
冒頭から色々不穏な空気を纏っており、途中からは『全員、嘘つき』というキャッチフレーズが思い浮かぶほどに、登場人物全員に裏の顔、というか裏の事情が設定されている。堀川・松倉の設定が"信用できない語り手"として上手く活用されており、これは続編でも応用が効きそう。しかし、個々のエピソードに目を向けると、随分と投げっぱなしのまま終わってしまった物も多く、ラストも唐突に訪れた印象。今後の作品でフォローアップがあるのだろうか。強烈な存在感を示していた瀬野さんは続投しそう。ウッチーもきっとまた出てくるはず。2025/07/06
播州(markⅡ)
50
前作の図書委員バディが帰ってきた!最序盤こそいなかったが、松倉と堀川の関係が壊れてなくてほっとした。そんな二人にさっそくの事件。トリカブトの押し花の栞が…解決に乗り出す二人の前に出てくる奴らみんなみーんな、嘘はつくし、肝心なことは言わないし…なんやこの学校!と、いうか人間なら当たり前なのか。知らん私人に何もかも胸襟開いて語り尽くす奴のほうがヤバい奴だわ。切れ者二人だけれど、どうしようもなく意味のない高校生の会話が非常に和む。ホットガスパチョのくだりがくだらなくて好き。2025/07/01
007 kazu
47
図書委員の堀川と松倉が返却された本にはさまれたトリカブトの花の栞から始まる物語。なぜか同級生の美女瀬野に焼かれてしまうが、学校の問題教師が後日、中毒で倒れる。 栞の行方と配布者は誰なのか?各キャラが少しづつ情報を表に出さないことで真相の発覚が遅れていく展開や相変わらずキャラがたっている点はさすがと思うが、全体的に薄味、この手の話だと動機がどれだけ納得性あるかが大事だと思うが、、弱きものが持つ武器としては中途半端過ぎないか?刃物程、直接的でないのでリアリティがあると解釈できる? ★32025/08/06
殿下
44
図書室の返却本に挟まれていた押し花の栞を巡る学園ミステリー。関わる人達それぞれの思惑から生じる嘘が幾重ものベールのよう。物言いも思考も高校生らしからぬ図書委員二人の正義感で真相に辿り着くが、全貌は書かれていない。事件よりも若者の心の内に重心を置いた作品。2025/08/17
みこ
36
二人の図書委員を主人公にしたミステリー第2弾。前作のような短編連作かと思ったらガッツリ長編だった。今回も二人がお互いに本心を隠し、語り手である堀川ですら読者に隠し事を抱えているという不安定さが絶妙なスパイスになっている。こういうのはやり過ぎると読み手をしらけさせてしまうのでギリギリの塩梅だと思う。本作では力の弱い少年少女の大人に対する危うい不信感も盛り込まれてただ面白かったの一言では表現できない読後感を味わうことになった。作中でもしっかり時間は流れているから続編はせいぜい1~2作かな。2025/08/17