内容説明
恋人をなくした老婦人、閉ざされた未来を前に生き延びようとする若者……。ハン・ガン以後最も注目される韓国作家が描き出す、現代を生きる私たちの日常という祈り。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
37
8編の短編集。格差や暴力、貧困、喪失など韓国文学らしさに満ちた作品で、多くは後悔とその後遺症が余韻となっている雰囲気。しんどいながらも力強く頼もしい胆力を感じ、著者の筆力の逞しさに希望を抱ける。中でも、死んだ恋人との思い出を書き始めようとするが、なかなか筆が進まない老婦人の物語「ミョンシル」が、とてもよかった。「人が死んだあとも終わらない何かがあるということ」という想像が、どれほど慰めになり美しいかについて考えるミョンシル。馳せる思いの心理描写が素晴らしかった。2025/04/29
Roko
29
都会に出れば何とかなると信じてやって来たけれど、結局挫折して田舎へ帰ろうかと思ってしまう人たち。でも、そこから逃げて来たということを思い出して戻ることができない。貧しいまま死を待つしかないという苦しさ。未来が素晴らしいと信じられない空しさ。この感覚は韓国も日本も変わりないなぁ。世の中が少しずついい方へ向かうと信じて来た20世紀だったけど、21世紀になってからはそういう夢がなくなっちゃった。貧富の差は広がるばかりで、大学出たって就職できるあてはないし。2025/06/11
かふ
24
単行本で読んでいたのだが、図書館の新刊本コーナーにあったので借りてしまった。『笑う男』は、韓国では日本のように男女の人称がはっきりしないことが多く、それで読者によって異性愛なのか同性愛なのか分かれるというので、そのように訳し直したとか。この短編は後の『ディディの傘』に繋がっていく作品。 https://note.com/aoyadokari/n/nd7e5633dc150 2026/01/28
Nishiumi
24
とてもとても良かった。人生の分岐点や喪失の瞬間を、後から思い出してはああでもない、こうでもないと考える人々。その時はそうせざるを得なかったことでも、それがきっかけで確かに変わってしまったことへの悲しみ。伏線が積み重なって、「それ」が明らかになる鮮やかさ、手腕は見事。2026/01/03
R子
24
短篇8本を収録。どの短篇も密度が濃くバラエティに富んでいて良かった。中でも「ミョンシル」が好き。ラストで涙した。大切な人の死を受け入れること、覚えていること。それは過去を振り返りひたすらに祈ることだ。記憶は美しくて、けれど不意に空しくなって苦しくもなる。静かな愛を感じる読後感だった。感情の歪んだ発露としての笑いを描いた「わらわい」は不気味でリアル。抑え込んだ感情の発散(爆発)という怖さでは「誰が」も嫌な話(褒め言葉)だ。2025/03/15




