河出文庫<br> 誰でもない

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河出文庫
誰でもない

  • ISBN:9784309468112

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内容説明

恋人をなくした老婦人、閉ざされた未来を前に生き延びようとする若者……。ハン・ガン以後最も注目される韓国作家が描き出す、現代を生きる私たちの日常という祈り。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイティ

35
8編の短編集。格差や暴力、貧困、喪失など韓国文学らしさに満ちた作品で、多くは後悔とその後遺症が余韻となっている雰囲気。しんどいながらも力強く頼もしい胆力を感じ、著者の筆力の逞しさに希望を抱ける。中でも、死んだ恋人との思い出を書き始めようとするが、なかなか筆が進まない老婦人の物語「ミョンシル」が、とてもよかった。「人が死んだあとも終わらない何かがあるということ」という想像が、どれほど慰めになり美しいかについて考えるミョンシル。馳せる思いの心理描写が素晴らしかった。2025/04/29

Roko

28
都会に出れば何とかなると信じてやって来たけれど、結局挫折して田舎へ帰ろうかと思ってしまう人たち。でも、そこから逃げて来たということを思い出して戻ることができない。貧しいまま死を待つしかないという苦しさ。未来が素晴らしいと信じられない空しさ。この感覚は韓国も日本も変わりないなぁ。世の中が少しずついい方へ向かうと信じて来た20世紀だったけど、21世紀になってからはそういう夢がなくなっちゃった。貧富の差は広がるばかりで、大学出たって就職できるあてはないし。2025/06/11

R子

23
短篇8本を収録。どの短篇も密度が濃くバラエティに富んでいて良かった。中でも「ミョンシル」が好き。ラストで涙した。大切な人の死を受け入れること、覚えていること。それは過去を振り返りひたすらに祈ることだ。記憶は美しくて、けれど不意に空しくなって苦しくもなる。静かな愛を感じる読後感だった。感情の歪んだ発露としての笑いを描いた「わらわい」は不気味でリアル。抑え込んだ感情の発散(爆発)という怖さでは「誰が」も嫌な話(褒め言葉)だ。2025/03/15

だいふく

9
斎藤真理子さんの訳された本は、解説が読み応えがあって好き。この作家さんは斎藤さんがトークイベントで紹介されていて知った。8つの短編集。主人公たちの心の動きがすっと入ってきて、戸惑ったり、不安になったり、焦ったり、心が締めつけられたり。 「笑う男」が一番せつなくてつらかったけれど好き。積読の中に『ディディの傘』があったので、次はそれを読みたいと思う。2025/05/28

ゆう

9
異様な存在感を放つ登場人物たちが織りなす8話の短編集。韓国の世情、金融機関、セウォル号事件などがそれぞれのエピソードからうっすらと漂う。訳者の斎藤さんの力量も大きい。原書で読んだらどんな感じなのか気になる。韓国文学を代表する作家であるこの方が、人間を何でもないもののように扱う社会に警鐘を鳴らす。2025/05/16

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