内容説明
ヒューゴー賞受賞の傑作ダークファンタジイ
〔ヒューゴー賞受賞〕小国の王女マーラは、大国の王子に嫁いだ姉がいずれ殺されるだろうと知る。そして、次はマーラが狙われることも。身を守るには王子を殺すしかないが、彼は権力と妖精のゴッドマザーの魔法で護られていた。マーラはまじないを操る墓守女に助けを求め、イラクサのマントと骨の犬を作るが……
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
45
主人公は小国の王女マーラです。マーラの上の姉は強国に嫁いで命を落とし、次の姉の命も狙われていることが分かります。修道院で暮らしていたマーラは姉の命を救うための遍歴に出発。途中で墓守女の助けを得て、骨で出来ている犬を作ります。ファンタジーの形をとっていますが、人間社会の歪みを炙りだす力を持った物語です。女性を産むためだけの道具とみなす男性優位主義が崩されるのが痛快です。イラストレーターである作者は、ゴブリンなどが生きている魔法の世界を生き生きと描写。特にマーラになついている骨犬の描写が心に残りました。2025/07/16
ワッピー
33
不死の教母に守られた大国の王子に嫁いだ長女は死に、二人目の姉も暴力のもと次々と妊娠させられ、苦しんでいることを知った末姫は、姉の次の控えとして隔離されていた修道院を抜け出し、姉を救い出すために魔力を持った墓守女を訪ね、相談する資格を得るために不可能な課題をやりとげる。墓守女の導きでゴブリン市で手に入れた魔法、そして姫自身の教母の力を借りて、大国の王宮の広大な地下墓地へ潜入する…。男性原理をやんわりと否定しつつ、必要な手を着実に打って呪いを回避し、見事にピースをはめ込んだラストのカタルシスはなかなかのもの。2025/08/02
もち
17
「呪っていたんですよ。もう何世紀もずっと」◆北国へ嫁いだ姉たちが、相次いで身を崩した。王家の三女・マーラは、元凶の王を排除するため策を練る。死者を統べる魔女、半妖の教母、血染めの騎士に骨の犬。ちぐはぐな旅団が、白い大国の暗部を刺し貫く。■前半はスローだが、「五本指」が揃ってからは一気呵成。突破不能の仕掛けを、巧みに伏線を回収しながら打ち破り、最期まで突き進む。弱者はいつも食い物にされ、人はいずれ死ぬ。無常さと諦観を漂わせて進む復讐劇だが、勇気と冷静さと機転を皆で重ね、予期せぬ優しさと共に決着する。2025/06/11
おだまん
10
モーナが面白かったのでこちらにも期待。やはり主人公は芯のある女性。冒頭ちょっとホラー?と思ったけれどちゃんと魔法と御伽話の世界。オマージュも所々で楽しめました。2025/07/12
にぃと
7
姉、そして自分を守るために魔法に対抗する手段を手に入れようとするファンタジー、としても面白いんだけど、それ以上に未来を自分の手で掴み取ろうと模索する強さみたいなものが感じられた。特に国や大きいものを守るために犠牲になることを強いられる女性の立場や権利についての思い、みたいなものが感じられたしそういう環境の中で最善を掴み取ろうとする強かさ、みたいなのも描写されてたと思う。2025/08/10