内容説明
「私は人ではありません。数百年を旅して回り、メンタマグルメに興じています」
公園の雑木林を狩り場に、人間のメダマを狙う《猫》。
かかわったものに呪いをかけ、どこまでも追いかける《蛇》。
甘言で家を乗っ取り、金だけさらっていく《狐》。
古今東西、人間の陰に生き、喰らい、時に育てる化物たち。
その醜くて愛おしい姿を、とくと、ご覧あれ!
醜悪、異様、狡猾、艶然――。
恒川光太郎が描く、身の毛もよだつ究極のホラー七篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
99
恒川さんの文庫本最新刊で、あと恒川さんの未読の本は単行本2冊を残すのみとなりました。この本は表題にもあるように何かに化けた動物などが出てくる7つの短編が収められています。猫や蛇、狐などが出てきます。初めのほうの作品は人間のいやらしさが味方によってどうなっていくのかが示されています。恒川さんらしさが出ているのかと思いますが一番印象に残って読み終わってよかったと感じたのは短編としては長い最後の「音楽の子供たち」でした。2025/11/11
アッシュ姉
52
待望の恒川さんの最新文庫を購入。書店で目立つ位置に並べられていて嬉しい。本を開くだけでワクワクするのは恒川作品ならでは。トップバッターの「猫どろぼう猫」は猫ミスでも読んだが、コントのような展開とブラックユーモアがツボすぎて何度でも読み返したくなる面白さ。邪悪、怠惰、傲慢、残虐、悪の純度が高い短編が続いて闇に引き込まれるようだったが、終盤にかけて幻想性が強まり、映画を観ているような、壮大な旅をしたような気持ちに。ラストの「音楽の子供たち」は圧巻。恒川さんの頭の中を覗いてみたい。早くも次の新刊が待ち遠しい。2025/09/10
ざるこ
32
7篇。自然と同化し時間をかけてその場に溶け込み目に見えぬ何かに変貌する。それが「バケモノ」と言われるモノ(者)ではないかと想像を巡らせる。蛙の卵や海月を大量殺戮していた自身の子供時代を思い出し、あの残虐が私の奥底にも眠ったままでいないかと「胡乱の山犬」のリアルな迫力を肌で感じて血の気が引く。ひとの思念から生まれたであろうバケモノが自身の存在に疑問を持つ「音楽の子供たち」に至り、侘しさとも寂しさとも感じるラストに不思議な充足感を覚えた。メンタマグルメに興じるケシヨウの白昼の惨劇は戦慄!サバ虎猫おそろしや…。2025/06/12
まさ
23
単行本で読んでいるのだけど文庫が出たので再読。恒川さんの世界は黄昏時の朧げな広がりであることが多いのだけど、この短編集、特に前半は真夜中のような暗さが際立つ。後半はなんだか綺麗とも思える世界なのだけどね。久しぶりの再読だけど忘れている部分も多々ありました。2025/06/23
だのん
21
何にでもなれるケシヨウからは逃げられない、自分の弱さを狙われているようで恐怖を感じる短編集でした。結末が救われないように見えて、本当はそれが救いにもなっているように感じ、怖いけどそれだけじゃない不思議な感覚になり、もっと読みたくなる物語でした。2025/10/09




