内容説明
誰にも恋愛感情を抱いたことがなく、結婚や出産といった未来がまったく見えない平井。愛犬を亡くしたひとのために、３Ｄプリンターで死んだ犬を作り続ける菅沼。三十八歳と四十二歳、２人組「KI Dash」の推し活で繋がったふたりのコロナ禍での共同生活は、心地よく淡々と過ぎていくが――。世間一般の幸せをどうして諦めきれないのか。諦めてしまえば、楽になれるのだろうか。恋愛、結婚、出産、家族……どんな型にもうまくはまれない、でも、特別じゃない。《今》を生きるすべての人へ、あらゆる属性を越えて響く、何も持たない私たちの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遙
11
文庫化待ってました。文庫になるとなんと薄い！と驚きましたが、淡々とした女性2人の日常が綴られる中に、手放せない欲望や静かな葛藤を感じ、共感できる読者は何人もいるだろうなと感じました。 女として譲れないものは人それぞれなのだけど、1人じゃできない事が多すぎる。 こういった作品を読むとつくづくそう思います。 でもほんの些細な事で気の済む瞬間が訪れた時、肩の荷が降りたように楽になる。 その瞬間を誰もが欲してる。 すごく好きな文章でした。 次なる新作を心待ちにしております。2025/04/30
ヨシ
6
第46回すばる文学賞受賞作。推し活で知り合ったアラフォーの二人。人生で一度も恋愛感情を抱いたことがない平井と、副業として3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアを作り続ける菅沼。そんな彼女たちがルームシェアを始めたのだが…恋愛、結婚、出産、家族……普通とは違った生き方を選ぶ女性への応援歌。このテーマ大事だけど、みんなステレオタイプの書き方なのでちよっと飽きた。 2025/04/11
カノープス
5
初読み作家。互いの空洞を埋め合うような繊細な関係性を築く二人の女。それは決して完全な充足には至らない。平井の「結婚したくはない。子どもも欲しいというわけではない。しかし、その一方でそうした普通の人生を捨てる決意もまた持てない」というアンビバレントな心情は、現代の多くの人が直面する【選択の自由と重圧】を象徴する。社会的な「型」に縛られず、しかし完全に自由でもない状況は、現代の虚無の形と言えるだろう。今後、同世代の同じようなテーマを書く作家と、どのように差別化され、大谷の独自色が出てくるか。注目したい。2025/05/17
hirorin
4
これも書評で紹介されていたので読んでみました。コロナ渦以降、シェアハウス系が多いように思う。私は、ごめんまっぴらだけど。40前後の女友達が同居。一人は、結婚・恋愛に興味はないけれど（むしろ恐れている）卵子凍結をしている。もう一人も結婚する気はないけれど、不倫相手がいる模様。淡々と過ぎて行く日常だけど、この読後感、すごく多い。と思ったら、すばる文学賞受賞作。すばる文学賞に多い感じかな。可もなく不可もなく、きっと読んだことすら忘れてしまいそう。2025/05/28
ぴの
3
恋愛や結婚、出産を諦めたと言ってる主人公には一緒にフラッと熱海に行ける友人がいて良いじゃん、と思ったけれど、友人同士じゃ担えない役割がある、というのが本音だよね。うっすらとしたやるせなさがリアルで良い。2025/04/15
