岩波新書<br> ケアと編集

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岩波新書
ケアと編集

  • 著者名:白石正明【著】
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2025/04発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 270pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320630

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内容説明

もはやこれまでと諦めてうなだれたとき,足元にまったく違うモノサシが落ちている.与えられた問いの外に出てみれば,あらふしぎ,あなたの弱さは克服すべきものじゃなく,存在の「傾き」として不意に輝きだす──.〈ケアをひらく〉の名編集者がみんなの弱さをグッと後押し.自分を変えずに生きやすくなる逆説の自他啓発書.

目次

Ⅰ いかにして編集の先生に出会ったか
1 ケアとは
刹那的なケア
リハビリの昼と夜
失禁と世界の回復
太陽と空気と地面とケア
2 べてるの家との出会い
意外に遠い福祉と医療
病院のにおい
もうけている作業所
網走での出会い
自分自身で,共に
「反」ではなく「非」
戦わないでさっさと逃げる
3 編集の先生
試されている感じがしない
肯定と否定の外側で
「そこがいいね!」がなぜ通用するか
〈図〉は変えないで〈地〉を変える
「商業」という魔法
医学的編集とソーシャルワーク的編集
Ⅱ ズレて離れて外へ
1 問いの外に出ざるを得ない人たち
問いの外に思考が流れてしまう人たち
風変わりな言葉たち
主語が患者と入れ替わる
土管の中で話を聞く
二つのことを同時に伝える
因果沼から“かどわかし”へ
問いの圏外に出るために
2 分母を変えるのが編集
強いロボットは歩けない
依存症は依存が足りない
「治す」「克服する」ではない物語へ
3 吃音者は分母を変えて生きていく
『どもる体』のはじまり
吃音者の方法(1)~(4)諦める・準備しない・波に乗る・周囲を変える
分母を変える一発逆転芸
4 面と向かわない力
架空の劇なのに言えない
後ろから,波のような温かい圧が……
「信」をめぐって――東大での体験
内面の「信」から,対人の「信」へ
「側聞」という方法
「正対」から逃れて
Ⅲ ケアは現在に奉仕する
1 ケアと社交
ヘルパーへのアドバイスがなぜ役に立つ?
社交するために社交する
対話するために対話する
過程に内在するための工夫
二〇年以上前の潔さんの言葉
2 消費と浪費と水中毒
過食嘔吐の記憶
「浪費」としての飲水へ
十全な,今ここでの満足
3 今ここわたし
「惚れる」の謎
人がもっとも充実しているとき
すでに本番は,はじまっている
リスクとワクワク
4 ナイチンゲールを真に受ける
生体は善き方向に進む
本来治りやすい病気である
ケアと痛み止め
俺はすでにして完全
Ⅳ ケアが発見する
1 原因に遡らない思考
因果論から構成論へ
幻視・幻聴を聞きまくってデータ収集
幻覚妄想の社会モデル?
前提を変えること
2 手を動かすより口を動かせ
依存症の回復モデル
マイノリティの逆襲?
「ケア論的転回」としてのハームリダクション
3 同じと違う
中井久夫と発達障害
見ている世界が違う
住む星が違うから体も違う
量的な違いが無視される
発達障害と「脳の多様性」
言語化への努力
4 いつも二つある
輻輳する時間
チキンカレーとラムカレー
食べると逃げるが併走する
一列に並べることの利点
Ⅴ 「受け」の豊かさに向けて
1 蘭の花のように愛でる
ALSとは
身体への着目
意図の推測から勝手な解釈へ
蘭の花のように
生を享受する人
2 受ける人
接続詞はドアを閉める
世界は受け取ることで発生する
「いる」のは忙しい
受け身と可能がなぜ同じ言葉なのか
3 いい「波」はどこから来るか
よそに行ったら縛るから
「内面」という無間地獄に落ちる前に
べてるに来れば病気が出る
なぜ,いい「波」が来るのか
規範から遠く離れて
4 受動性と偶然性
蹴る前に受けるスポーツ
受動性や偶然性が排除される
中動態と能動的受動
弱い編集
Ⅳ 弱い編集――ケアの本ができるまで
1 山の上ホテルのペーパーナプキン
――中井久夫・山口直彦著『看護のための精神医学』
地下の薄暗い書庫で
病院のカビ臭い倉庫で
ニワトリと卵と,拾う人
生活の政治学
普通への愛と憧れ
2 魔法と技術のあいだ
――本田美和子,イヴ・ジネスト,ロゼット・マレスコッティ著『ユマニチュード入門』
「好き」にさせる技術
人間的というより動物的?
属人化と標準化のあいだで
3 弱いロボットの吸引力
――坂口恭平著『坂口恭平 躁鬱日記』,岡田美智男著『弱いロボット』
ひとり音楽会と中二病
閉じない人たち
あとがき
主な参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

95
医学書院からケアをひらくシリーズを出版し、25年間編集者として数多くの名著を世に送り出して来た。数冊しか読んでいないが、どの著作も印象に残っている。著者は定年退職となり、初めて書く側になり、テーマとしてきたケアと自分が行なってきた編集とは同じなのではないかと、なんとなく感じていたことを綴るうち、はっきりとわかってきた。ケアも編集もモノサシを変えることに本質があるのだと。そこにあること、それだけで周囲との差異にもなるし、独自性にもなる。ただ見方を変えるだけ。ケアをひらくシリーズをもっと読みたくなりました。2025/06/12

ネギっ子gen

69
【理解されるということは最大のケアである】昨年、医学書院を定年退職された「ケアをひらく」シリーズ(43冊刊行)の名編集者が、岩波新書に登場!巻末に参考文献。<今、ケアとは何か、と聞かれたらこう答えるだろう。「それ自身には改変を加えず、その人の持って生まれた“傾き”のままで生きられるように、背景(言葉、人間関係、環境)を変えること」と。編集も恐らく似たような行為なのだろう。文章に改変を加えるより先に、その人や文章の“傾き”が輝きに変わるような背景(文脈、構成)をつくっていく作業が編集の本態ではないか>と。⇒2025/05/31

shikashika555

40
ものすごい密度の濃い内容。 何よりべてるの家でとられているコミュニケーションの方法に関しては目から鱗が何枚も落ちた。並行して「私には不得手な方法だ」とも。 一見して筋が通らず不誠実と思えるコミュニケーション方法を自分から取れるとは思えない。加えて会話には内容がなければ座りが悪いと感じてしまうので「大事な話をしたら会話が終わってしまうからダメ」などという理屈には正直辟易してしまうのだ。 しかしある部分においては、本読みが軽蔑とともに論う「ヤンキー的な毛繕い的な意味のない頭の悪い会話」が重要なのだ。 2025/06/05

今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン

27
医学書院の「ケアをひらく」シリーズの立役者となった名編集、白石さんの著書。白石さんが医学書院にスカウトされたというのは、これは歴史的に重要な出来事なのではないか。その後の白石さんの活躍によって、どれだけ精神医療、ケアの現場に救いとなるものがもたらされたことか。白石さんという種を開花させたのはお馴染み「べてるの家」。白石さんとべてるの家との出会いがなければ、「ケアをひらく」シリーズも大輪の花を咲かせることはなかっただろう。帯画像にある「人を変えたり治したりしない」、そのためには「モノサシを変える」ことが↓2025/05/11

ばんだねいっぺい

23
これも、ケアをひらくシリーズの一冊だ。いい波は、規範のないアジールにしかやってこないのだろうか。わかったようでわかっていないので、これからも、本を読ませてもらって、考えさせてもらいたい。欄の花は、よかったな。涙が出てくるけど。2025/06/27

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