内容説明
【松井玲奈が4年ぶりに贈る待望の新作小説】
あの日、フィクションのような人生が始まった。
著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。
晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、
野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。
どうにか端役を手にしたとある中年の女優は、中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
そして、やってきた公演初日。
幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!
俳優としても活躍する著者が3作目の舞台に選んだのは、「演劇」の世界。
ふたりの女性が織り成す関係は、ゆっくりと、繊細に、絡み合う。
現実にうちひしがれる絶望、強運を手にして舞い上がる歓び、突然やってくる予想外の衝撃。
幾つもの感情を抱えた先の終着点で、それぞれが決断した選択とは――。
「演じる」とは何かを問う、唯一無二の物語。
【著者略歴】
松井玲奈(まつい・れな)
1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。俳優・作家。
2019年『カモフラージュ』で作家デビュー。その他の小説に『累々』、エッセイに『ひみつのたべもの』『私だけの水槽』がある。本作『カット・イン/カット・アウト』が、3作目の小説となる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
205
松井 玲奈、4作目です。本書は、表紙のイメージとは違いましたが、演劇界のまる子の物語、連作短編集でした。芸能界は一見華やかですが、精神的にも肉体的にもハードで、かなりブラックな世界です。 その中で居場所を確保し、小説も書いている著者は相当偉いと思います。 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/cutincutout/2025/05/28
パトラッシュ
165
50歳を過ぎても売れずにくすぶるが、舞台が好きでやめられない女優。アイドルとして脚光を浴びながら、初の舞台で限界を悟って自信を失う少女。そんな2人が芝居で共演したのを機に新たな進路を発見し、周囲の人びとも自らの道を見い出していく。いわば演劇を核としたグランドホテル形式のドラマであり、生き方を見つめ直す様々な姿が描かれていく。大事件や事故が起こるわけでなく淡々と進むが、出会いがあればこそ変わった人生がさざ波を広げていく展開はなるほどと思わせる。歌手も舞台も映像も体験した松井玲奈だからこそ書き得た物語だろう。2025/06/20
hiace9000
143
脇役俳優坂田まち子、通称マル子52歳。彼女を軸に、舞台と映像の世界に関わる人々の視点で、映像的に人生を描く名演劇作品を観終えた感。キャッチーな書名は映像分野の文脈で使われがちだが、連作6話中の印象的場面を象徴する意味合いも強かろう。話の運びや展開、構成も見事だが、圧巻は最終話の鮮烈な言葉の切れ味と、本業の人間ゆえ描き得る内面吐露と心理描写。言葉の使いっぷりに瞠目し、読み手をするりと作中に滑り込ませて登場人物に共感させる手腕には唸らされるはず。母娘の確執テーマの次作も期待できそうな作家力。是非推し!の一冊。2025/05/24
アキ
102
デビュー作「カモフラージュ」が良かったので、今回も読むのを楽しみにしていました。表紙の装丁の絵も良いです。今回は著者の得意とするアイドルと舞台女優が主人公の複数視点で展開する物語でした。最後に2人が意外な形で再会する甘めのラストシーンでした。著者自身の経験を生かした小説でしたが、さすがに50歳代のマル子さんがアイドルのももの代役を演じるとは思いませんでした。カット・インはマル子、カット・アウトはもものことなのでしょうか。芸能界の裏方を辛口に書くことは難しいでしょうが、今後の作品に期待したいです。2025/05/17
tenori
76
作家・松井玲奈、満を持しての長編小説は期待以上。グループアイドルとして秒刻みで駆け抜けた経験、俳優として舞台や映像作品に向き合う現状が圧倒的なリアリティを放っているのに加えて物語のプロットも秀逸。主演予定の舞台を体調不良で降板してしまう20歳のアイドルと、代役に抜擢された売れない52歳の舞台女優。舞台前後での両者の変化が軸になるが、アイドルを推す大学生と舞台女優のマネージャーの視点が入ることで陰影が強調される巧みな構成。最後にそう繋げてくるんだという驚き。本音の裏側に潜むものを描くのは相変わらず上手。2025/04/16
-
- 電子書籍
- 呪い刻むは我にあり【分冊版】29
-
- 電子書籍
- 安心 (2024年1月早春号)
-
- 電子書籍
- この本は僕の経験値を生んだ【タテヨミ】…
-
- 電子書籍
- 羽田あい『ギリエロ完全版』 ピンク倶楽部
-
- 電子書籍
- ファンタジー放送局43【タテヨミ】 R…