内容説明
自身の戦争体験を通して人間心理を追求し、鋭敏な感性で作品に昇華した梅崎春生。戦後派を代表する著者の戦争を描いた主要作品を収める小説集(全二巻)。第Ⅰ巻は、敗戦直後に書き上げた出世作「桜島」、芸術選奨文部大臣賞受賞作「狂い凧」を含む十七篇と、関連エッセイを収める。〈解説〉真鍋元之/日和聡子
目次
桜 島
水兵帽の話
万 吉
蟹
年 齢
眼鏡の話
埋 葬
崖
ある失踪
演習旅行
山伏兵長
生 活
無名颱風
上里班長
歯
赤い駱駝
狂い凧
巻末エッセイ
『桜島』あとがき
『桜島』のこと
八年振りに訪ねる――桜島
『桜島』――「気宇壮大」なあとがき
解説Ⅰ真鍋元之
解説Ⅱ日和聡子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さえもん
1
終戦を迎えたが、自分達の居場所があるのか・のけものにされてしまうのではないかなど従来の生活へ戻る不安があった、というのは、戦争経験のない現代の我々には想像を絶する感覚である。 昔、おばあちゃんから「おじいちゃんは衛生兵だったから戦争に行かずに済んだ」という話を聞かされていたから、てっきり、病院みたいなところで働いていてそのまま終戦を迎えたのだとばかり思っていたが、『狂い凧』を読んで、衛生兵でも最前線にいることはあり得ることを知って、急に、あの優しい笑顔のおじいちゃんはとうだったのだろうとすごく気になった。2025/04/23