内容説明
「大正末期から昭和十年代半ばにかけての十数年間は都市部を中心に「昭和モダン」と呼ばれるスマートで軽快な大衆文化が栄え、人々がこぞって新奇な刺激と快楽を追い求めた時代であった。同時に、生活様式の変化にともなって昔ながらの怪談とは趣きを異にする新しいスタイルの怪奇小説が生まれ、娯楽として享受された時代でもある」(序文より)この時代の研究者が精選した21篇。当時ホラー小説の分野で中心的な存在だった〈新青年〉誌掲載作を除外し、犯罪実話雑誌から少年誌まで幅広い媒体から集めた。/【目次】序文 恐怖が娯楽だった時代 会津信吾/高田義一郎「疾病(しっぺい)の脅威」/椎名頼己「屍蝋(しろう)荘奇談」/渡邊洲蔵「亡命せる異人幽霊」/西田鷹止「火星の人間」/角田喜久雄「肉」/十菱愛彦「青銅の燭台(しょくだい)」/庄野義信「紅棒で描いた殺人画」/夢川佐市「鱶(ふか)」/小川好子「殺人と遊戯と」/妹尾アキ夫「硝子箱の眼」/宮里良保「墓地下(ぼちした)の研究所」/喜多槐三「蛇」/那珂良二「毒ガスと恋人の眼」/高垣眸「バビロンの吸血鬼」/城田シュレーダー「食人植物サラセニア」/阿部徳蔵「首切術の娘」/米村正一「恐怖鬼侫魔(きねま)倶楽部奇譚」/小山甲三「インデヤンの手」/横瀬夜雨「早すぎた埋葬」/岩佐東一郎「死亡放送」/竹村猛児「人の居ないエレヴエーター」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
72
何?これ?最高だよ。自分の琴線に触れまくりな一冊でした。大正末期から昭和十年代までに発表されたホラーアンソロジーなのだが、未だ探偵小説と怪談、SFがジャンルと言う壁で隔てられていない時代、それらが渾然一体となったどれも奇怪な読み心地の作品ばかりが集められている。冒頭の「疾病の脅威」からトラウマものだし、その後もマッドサイエンティストに人体実験、殺人に異国趣味とその手の話が大好きな人間にとっては感涙物の話が続出する。今となっては一部の人以外忘れられた作家ばかりだが、是非とも全作家全作品を追いたくなるなあ。2025/06/03
藤月はな(灯れ松明の火)
52
戦前の太平楽(だが不穏さはそこかしこにあった)の時代に一世を風靡したモダンホラーを取り揃えた傑作選。グランギニョル風あり、実録めいたものもありと中々、読んでいて楽しいです。個人的なお気に入りは妖気芬々な「屍蝋荘奇談」、「猿の手」への変奏曲「インデアンの手」、男性版「ラパッチーニの娘」な「蛇」、SFパニックものかと思いきや・・・「火星の人間」、無惨な結末が忘れがたい「毒ガスと恋人の眼」。そしてホラー小説の歴史を目指す者への叱咤激励やまだ、在命かもしれない作家さんへの言葉も真摯でチャーミングなのも好感度高し。2025/06/15
だるま
19
戦前の雑誌に掲載された、怪談とは一線を画すモダンホラーの傑作選。当時のホラー作品の母体とも言える『新青年』の掲載作以外から全編を選んだとの事で、21編載っているが数人を除いて知らない作家ばかり。作品の出来も玉石混交だが、どれも新ジャンルのモダンホラーに挑戦している意欲が感じられて概ね面白かった。表題作はホラーミステリで、著者の高垣眸氏が「快傑黒頭巾」も書いているとは知らなかった。良作。他には流石の貫禄・角田喜久雄作品も良かった。怪談の域を出ていない作品や、単に気持ち悪い作品もあったけど、好企画だと思う。2025/06/22
まさ☆( ^ω^ )♬
15
創元推理文庫のアンソロジーものは本当に外れがないな。本作は、大正末期から昭和10年代辺りに発表されたホラー短編集。ホラーと言うより怪奇譚という感じの話が多かった印象。21遍も収録されていて、バリエーションも豊富でかなり楽しめた。1作毎に詳しい解説が用意されているのも良かった。こんな昔の作品を今でも十分に楽しめるって幸せな事だなあ。最後の「人の居ないエレヴエーター」が怖かった。表題「バビロンの吸血鬼」、「インデヤンの手」が特に気に入ったかな。2025/08/10
hata2
4
表題作が一般向けに取っつき易いと思うが、「疾病の脅威」のような、モラルから外れた悪趣味な作品もある。名前を聞いた事がない作者ばかりで、何が出てくるか予想が出来ない。最後にまとめて解説されるより、作品ごとに解説が入る構成は良いと思う。2025/06/16
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