内容説明
バベルが供給する、銀を用いた魔法によって世界を支配する大英帝国。通訳として広東を訪れたロビンたちは、イギリスが阿片貿易を口実に清朝政府に戦争をしかけ、中国が持つ膨大な銀をわがものにしようとしていることを目の当たりにする。そしてロビンは、後戻りのできないひとつの決断をする。帰国したロビンたちは、戦争を食い止めるべく奔走するが……言語の力を巡る本格ファンタジー。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
72
銀を用いて魔法的な力が使える世界。1830年のオックスフォードを舞台に繰り広げられる「言葉の力」をテーマにしたダークファンタジー。異なる言語の意味のズレを使い、銀を媒介にして適合対(マッチペア)を唱える事で発動される魔法。世界中の言語を研究し魔法の開発と銀作りを担う翻訳研究所「バベル」へ言語の才能から送り込まれた中国人の少年ロビンと同期の仲間達の4人。彼らの友情と恩師の抱える秘密、英国が銀の力を独占して行おうとしている許しがたい行為。知ってしまった彼らの苦悩と決断。ダイナミックかつ切ないストーリーだった。2025/06/11
syaori
60
この世界の動力・銀工術の基本原理となる翻訳に含まれる歪みと捩れ、これは英国に連れてこられ様々な特権を与えられながら「外国人」として印され続ける主人公達が味わうもの、また自由貿易の言葉の下に彼らの母国を搾取する帝国主義の象徴で、下巻はこの歪みの是正を目指し物語が進みます。その中で主人公と彼の同期達の立場の相違も明白になり、相手のためなら「死んでもかまわない」と思い合いながらも対立してゆくことに。最後は彼らが味わった翻訳の不可能性と、その異なる世界・相手を理解するための努力への希望が交錯して胸が詰まりました。2025/11/07
小太郎
54
上巻を読んで続きがすぐに読みたくなったのも久しぶり。ある程度予定調和的なエンディングでは?と予想していたこちらの上をいく怒涛の展開にやられてしましました(笑)これは産業革命後の世界の趨勢を、銀と言葉が魔法の触媒として機能する世界をベースにして展開した歴史改変SF。それも物語の深み、人物の書き込みなど一級品です。特に面倒な翻訳がモチーフの日本語訳はとても大変だったと感じました。ページの横についてる注釈も中々シャレてます。やはりこう言う本に出合えるから読書はやめられない。今年のベスト候補!★4.52025/05/23
ひらちゃん
39
上巻の分厚さに圧倒されていたから下巻は薄くてびっくり。けれど急に暴力的結末になるなんて想像してなかった。差別はなくならないし、便利さを求め搾取してきたものが崩壊していく様はまるでテロ。言葉を使った魔法は言葉で納めきれなかったのは残念。ロビンたち植民地より連れてこられ全部を搾取されて来た者たちの革命秘史なんだから仕方ないのだろうけど。2025/09/23
とも
34
下巻。ラヴェル殺害から坂を転がるような展開。一人また一人離脱、そして裏切り。下巻は政治色が強い。 大枠としてこの話は産業革命時代の英国と支配国の搾取の関係を描いたものだろう。 ロビンやヴィクトワールなど外国人視点から語られる疎外感。英国人であるレティには彼らの根底の考えが理解できない。ダークサイドに堕ちたレティだが彼女には彼女なりの理屈がありまた人間臭くもあり嫌いになれないなあ。 歴史に現代を投影した大人のダークアカデミア小説。2025/05/06




