内容説明
文芸の世界で最も注目を集める作家が挑んだ、言葉の定義をめぐるエッセイ集。
「好きになる」「さびしさ」「つきあう」――。日常で何気なく使っている言葉で私たちは、他人と「本当に」分かり合えているのだろうか。一つ一つの言葉が持つあいまいさや脆さを鋭く見抜き、記憶や経験、痛みや喜びの「手ざわり」からその意味を結び直す。他人や、自分自身や、そのあいだにある関係を観察した日々の、試行錯誤の記録。
【内容】
まえがき
1.「友だち」「遊びと定義」「敬意とあなどり」「やさしさ」「確認」「忘れる」「くさみ」
2.「好きになる」「恋」「ときめき」「性欲」「つきあう」「愛する」
3.あなた「友だち2」「めまいと怒り」「さびしさ」「寝る」「飲むとわかる」「乗る」「観察」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
66
【この本は、わたしの定義をめぐる試行錯誤の記録です】小学生から高校生対象の「ことぱ舎」という名前の国語教室を開いている著者が、「毎回一つの言葉を定義すること」という一つだけのルールのもとに書いたエッセイ。<書くことはわたしにとって考えるための手段です。書きはじめるときには、つねにわからないところからスタートしています。どんなゴールへ至るかは書いてみないとわかりません。書きながら、書く手を通して、一歩一歩考えているのです。そして、散文を書くときと詩を書くときには、まったく異なる道を通る必要があります>と。⇒2025/09/02
しゃが
43
言葉の定義をめぐるエッセイ集。詳細は説明しにくいが、内容は著者の感性ほど極端ではないが、友達のような人、夫、自分やそのあいだにある関係が生じる際に感じる違和感のようなものは共感。「同じ言葉を使う他人がいる。…言葉がわたしの中である意味をむすぶとき、そこにはわたしの記憶や、経験や、痛みや喜びの手ざわりが、どうしようもなくまとわりつく。そしてきっと、他人の使う言葉には、彼らの記憶や、経験や、手ざわりが、同じようにまとわりついている。」と。書名が「ことば」ではなく「ことぱ」なのも緊張をほぐしてくれて興味深かった2025/02/18
メタボン
29
☆☆☆ 詩人が言葉を定義する試み。定義と言ってもなまなかなものではなく、少しひねくれた、うがったものに感じるのは、匂坂くじらの思考の過程を経たものだから。正直この人の詩は私の好みではないし、身近にいたら敬遠するタイプの人かもしれない。ただ発する言葉には何かひっかかるものがある。この種のエッセイはやはり蜂飼耳の方が好き。ただし小説は読んでみたい。文字を入れ替えて遊ぶこと(マイケル・ジャクソン→ジャイケル・マクソンなど)をスプーナリズムというのを初めて知った。2025/02/16
あおでん@やさどく管理人
29
ウェブマガジンで連載していたエッセイをまとめたもので、毎回一つの言葉の「定義」を語るというもの。辞書的な定義というよりは、くじらさん個人の経験からその言葉の意味を探って(観察して)いくエッセイという方が合っているかも。「やさしさ」の章で、バスの運転手のすぐ後ろにある席の「『やさしくもいたいけれど、なるべくいい目にもあいたい』という欲求」は心当たりがありすぎる。とはいえ、他の言葉を並べて定義しようとすればするほど、その言葉の本質から遠ざかってしまうような気がしてくるのも、何となくわかる。2025/02/03
aloha0307
20
本書📖のテーマは「ひとつの言葉を定義すること」...これって意外と難しいですね。特徴のひとつを述べただけでは十分でないし、正しく抽象化しなくてはならないですから。著者:くじらさんは国語辞典ではなく、「わたし」のオリジナルな定義を書いてみようと提案しています🖋 これまで何を考え、何を大切にしてきたのかという生き方と結びつくのだね2025/06/25




