内容説明
昭和天皇が「象徴」を受け入れたという「聖断」は存在するのか――。
日本国憲法の基本原理の一つである国民主権の成立過程を追うなかで発見された資料には、昭和天皇のそれとは逆の真意が示されていた。
「聖断」の唯一の証言者・幣原喜重郎はなぜ昭和天皇の真意を隠したのか。
本書は、昭和天皇が主権を失うまでの経緯を検証し、戦後という時代の始まりと終わりを再考するものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
127
新憲法第1条「天皇は日本国の象徴」を昭和天皇は黙って受け入れたとされてきたが、実際は元首としての立場を残そうと側近を通じ政治工作を行っていた。しかし公職追放の脅しに屈した幣原内閣と国会は天皇の意向を無視し、GHQ草案をそのまま受け入れたため孤立した天皇は諒承するしかなかったのが真相だった。主権者であった戦前も平和の意志を無視した軍に暴走され、主権者の地位を降りる際も考えを通せず敗北した天皇の心中は察するに余りある。天皇の受諾神話は戦後の憲法定着を促したが、その政治的汚さを三島由紀夫は嫌ったのかもしれない。2025/02/25
ジュンジュン
16
現行憲法は押しつけ憲法か?この論争の深淵を丹念に考察していく。考察の結果に驚きはない。そりゃそうだろうなと。君臨もしたいし統治もしたい天皇とその意を受けて国体護持に奔走するエリート達。その脳裏に国民の権利はあったのだろうか?涙ぐましい努力も巨大な権力の前にあっさり頓挫。終章で自主憲法は可能だったのか?問うているが断言できる。彼らには無理だ!2025/04/30
koji
16
憲法記念日を前に読了。日本国憲法の成立過程において、国民主権・象徴天皇制をすんなり受け入れたとする昭和天皇の第三の聖断は事実ではなく、天皇は君民共治を望んでいたにも関わらず幣原・松本等がGHQの圧力に屈し、その意向を無視して現行憲法を制定したとするのが本書の結論です。登場人物が多い上、著者が調査過程を綿密に書き込んでいるので、しばしば(木にばかり目がいき)森が見えなくなり、とても読み難いのが欠点ですが、途中手元に「憲法」(芦部信喜)を置き少し併読し乍ら読み進めた所論点が整理され視界が晴れました。コメントへ2025/04/29
キミ兄
7
日本国憲法第一条での主権在民に関するいわゆる「聖断」の虚構を暴く作品。実は昭和天皇が天皇主権にこだわっていたのにGHQの案を渋々受け入れただけだという。さらには朝鮮戦争時に日本が再軍備しようとしたとき、最高司令官は天皇であるべきと言った話とか、現代の天皇観から見るとビックリするような昭和天皇の認識が明らかになっている。 やっぱり昭和天皇は戦争責任を感じてなかったんだなあという感慨と、平成天皇退位時のあの会見が終戦時のその状況からすると憲政の常道に反するものだったという事が改めて分かった。☆☆☆☆☆2025/03/14
バルジ
6
昭和天皇の「敗北」を通して日本国憲法、ひいては敗戦国日本の実情を窺い知れる好著。本書ではGHQの有形無形の圧力の前に屈服し苦渋を飲まされる日本の政治指導者の姿がありありと描かれていて中々辛いものがある。しかし日本国憲法といういわば「不義の子」は日本側、ことに幣原首相や松本烝治国務相の政治責任が極めて大きい代物でというのは新鮮な視点である。日本側が内大臣府案のようなGHQ側と折衝しつつ憲法改正を成し遂げていれば…と歴史の「もし」に思いを馳せるのは許される行為であろう。戦後80年の今だからこそ読まれるべき2025/08/16
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