岩波現代文庫<br> 〈物語と日本人の心〉コレクション Ⅲ 神話と日本人の心

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岩波現代文庫
〈物語と日本人の心〉コレクション Ⅲ 神話と日本人の心

  • ISBN:9784006003463

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内容説明

河合隼雄が,ユング派分析家資格取得論文のテーマであった,日本神話の意味と魅力を,日本人読者に向けわかりやすく語る.太陽神アマテラスはなぜ女性なのか? ツクヨミの日本神話における役割とは? 世界の神話・物語との比較の中で日本人独特の心性の深層にせまるとともに,現代社会の課題を探る.晩年の主著,初の文庫化.(解説=中沢新一)

目次

序章 日の女神の輝く国
一 日の女神の誕生
二 神話の意味
三 現代人と神話
四 日本神話を読む
第一章 世界のはじまり
一 天地のはじめ
二 生成と創造
三 最初のトライアッド
四 神々の連鎖
第二章 国生みの親
一 結婚の儀式
二 男性と女性
三 意識のあり方
四 国生みと女神の死
五 火の起源
第三章 冥界探訪
一 イザナキの冥界体験
二 禁止を破る
三 原罪と原悲
四 原罪と日本人
第四章 三貴子の誕生
一 父親からの出産
二 目と日月
三 アマテラスとアテーナー
四 ツクヨミの役割
五 第二のトライアッド
第五章 アマテラスとスサノヲ
一 スサノヲの侵入
二 誓約
三 天の岩戸
四 アマテラスの変容
第六章 大女神の受難
一 大女神デーメーテール
二 再生の春,笑い
三 イナンナの冥界下り
四 イザナミ・アマテラス・アメノウズメ
第七章 スサノヲの多面性
一 スサノヲの幼児性
二 トリックスター
三 オオゲツヒメの変容
四 英雄スサノヲ
五 スサノヲ・ヤマトタケル・ホムチワケ
第八章 オオクニヌシの国造り
一 稲葉の素兎
二 オオクニヌシの求婚
三 スサノヲからオオクニヌシへ
四 スクナビコナとの協調
第九章 国譲り
一 均衡の論理
二 大いなる妥協
三 タカミムスヒの役割
四 サルダヒコとアメノウズメ
第十章 国の広がり
一 海幸と山幸
二 「見畏む」男
三 第三のトライアッド
第十一章 均衡とゆりもどし
一 均衡のダイナミズム
二 三輪の大物主
三 夢と神
四 サホビコとサホビメ
五 結合を破るもの
第十二章 日本神話の構造と課題
一 中空均衡構造
二 他文化の中空構造神話
三 ヒルコの役割
四 現代日本の課題
あとがき
解説 日本神話にみる三元論の思考 中沢新一
<物語と日本人の心>コレクション 刊行によせて 河合俊雄
事項リスト
固有名詞リスト

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nobi

78
杵築、ウタキ(「魂」の思想史[酒井健著]より)といった日本古来の清々しさに触れてみたいと思っていた身に正にフィットした書。ユング派分析家資格取得のための論文が元になっているからか、一般向けとしては事実検証、論理展開が周到過ぎではと思いつつも、しなやかで核心を見据える論考に痺れた。性*と笑いという切り口、神々の名が連なる理由、「見畏む」態度と「恥」の感覚、生と死の分離から海と陸の分離へ。「中空構造論」という発想。古事記の厳しい漢文から立ち現れるどこかあっけらかんとして強靭な生命力は、清々しさと相通じていた。2017/07/15

rokoroko

17
ユング心理学は私の10代後半20代前半にブームだった。時代はバブル。今映画「スズメの戸締り」みてなにか神話のようなものを大衆が求めているのかなと思い読み返す。友人も上代の神話をかの映画に感じたと言っていた。面白い2022/11/26

大島ちかり

14
日本文化は「中空構造論」いう発想が面白かった。3人いれば、1人は仲介役で仕事をしない人。中心は空虚な無。だから、争いがなく、丸く収まる。ついつい日本のアニメの主人公にこういう人が多いな。と思い出してしまった。2025/08/10

roughfractus02

13
著者は『古事記』の神々の関係にトライアッド(三角関係構造)を見出す。それはR・ジラールが見出した矛盾としての第三項を排除する一神教的「中心統合構造」と対照されて、第三項を「無為」化することで全体を調和させる多神教的「中空均衡構造」と呼ばれる。論理的整合性ではなく、全体の調和の美を重視する点に『古事記』での権力維持の構造の特徴がある。現行の天皇制の肯定という議論もあるが、西洋の論理的整合性を取り入れる近代以後も、臨床家である著者は、現代人の心に調和の美を維持する物語を通してこの構造が作動する様を注視する。2022/12/16

aiken

13
2003年の本。なぜ自分が古事記が好きなのか解説してくれる本。かなり面白い。天地、男女、生死、昼夜、山海などの二元軸、その二軸をバランスさせる一見役に立たない軸が三元軸となり中空構造を形作る。日本神話は常にこの三元を繰り返しながら進み、人間の意識の進化の過程を物語る。悪者を創らず善悪では物語を進ませない恥と怒りと畏む我が国の文化と説いていた。心理学者の読み方に感服。蛭子も含めた二重らせん構造でもいいかも。解説にある「神話は、とりわけ日本人にとっては、心理学の要石」。この要石がボクを古事記に惹きつけている。2021/06/06

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