内容説明
「かくして,わたしは気がついたのだ,自分の国を知らない,と」.一九六〇年.大統領選挙の直前,激動の一〇年の始まりの年.この国を「肌身で感じとってこなかった」二五年を埋めるべく,ロシナンテと名づけた改造トラックで,老プードルを相棒に旅に出た作家は,アメリカのどんな真相を見たのか? 路上を行く旅の記録.
目次
地図
第一部
第二部
第三部
第四部
訳者あとがき
登場地名一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
67
スタインベック、プードルのチャーリーと共にキャンプトラックのロシナンテに乗ってアメリカ一周の旅へ。旅の始まりがちょっと不安で憂鬱なのも、始まってみれば杞憂なのも思い当たる事が多くて親近感を覚えてしまう。国境沿いの杓子行儀なお役所仕事に苛立ちつつも、ある計らいで彼らも人間だと見直す姿や第一印象は最悪であるも本当は気のいい土地管理人と意気投合、熊出没によるチャーリーの悲劇を予想してしまい、野宿に怯えるなど、旅路はユーモラスに続く。だが、黒人差別は社会的善とする南部に憮然とするしかない記述は読んでいて苦い。2025/01/22
nobi
51
60年代のアメリカは90年代に村上春樹が見た“芸術的と言えるまでに退屈な風景”にまではなっていなかったものの、村のノスタルジックなイメージも地方独特の話しかたも消えつつあり、モービルホームが流行り、無表情な店員がいた。そんな風景を嘆きつつスタインベックは、出会った農場主をトラックの荷台に招き入れてアップルジャックを振るまい、駐車できないと文句を言ってきた若者を仲間にしてしまう。チャーリーは人の心を読めてでもおっとりしてる。そんな老犬の体調に気を揉んでしまう。青山南氏の訳は自然。最初翻訳と思わず読んでいた。2025/08/12
市太郎
24
読友さんのレビューを読んで選びました。スタインベックは初読。ロードノベル(と言って良いのかわかりませんが)は好きなジャンルなので楽しめた。もちろん旅本も好き。著者の有名な作品などは、いつか読んでみたいと思っていたので、こうした形で出会えたのも一種のご縁。また読まなければならない本が増えてしまった。ノンフィクションかどうかは疑問があるようだが全編にわたり様々なテーマが組み込まれており退屈しない。旅をする事で浮かんでくる雑多な出来事群に心をつかまれた。犬好きで旅好きで人好きでロシナンテ(車)好きな人にお勧め。2025/08/03
くさてる
21
スタインベックの短編が好きだ。読んでいて心地よい文章とそこから立ち上がって目に迫ってくるような情景に浸ると、良い小説とはこのことだと思う。これは小説ではなく、1960年のアメリカを愛犬と旅した「旅の記録」であるけれど、文章の良さは変わらない。ユーモアと、生活の匂いと、時代ならではの息遣いのようなものがあって、読み応えがあった。良かったです。2025/02/04
80000木
7
旅行記。犬との。おもしろいおもしろい。こんな人なのか。短編集とハツカネズミしか読んだことないけど、ちゃんと読もうと思った。愉快な人で怒りっぽい人で人間的な人だった。半分過ぎてまだアメリカの上半分終わってないから、どうなんのって思ってたけど、下半分すごいスピードで飛ばしてた 笑。2024/12/04