内容説明
台湾の少数民族・アミ族一家殺害事件で、インドネシア人の青年が逮捕された。公設弁護人の【 /トン】は、自身もアミ族出身だったが青年の弁護を引き受ける。しかし、青年は何も語ろうとしなかった。裁判はメディアの注目を集め、陰の組織が【 /トン】に圧力をかけはじめる。弁護士で映画監督でもある著者が描く迫真の法廷ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
84
台湾の死刑廃止論争や人種差別、格差社会に切り込んだ社会派リーガルミステリ。船長一家が惨殺され、船で働くインドネシア人の青年が逮捕される。動機も証拠もあり誰も死刑判決に異を唱えなかったのだが、二審から弁護をすることになった公設弁護人の佟(トン)は調書に疑問を抱き冤罪を疑う。自ら少数民族の出として苦労した天の邪鬼な彼は巨大企業からの圧力にも負けず戦い続け、そして裁判は思わぬ方向へ…。飄々した佟(トン)や代替役の蓮(リェン)、介護士のリーナなどの登場人物がとても魅力的。二組の父と子の物語としても感慨深い。2025/05/11
おたま
61
著者の唐福睿(タンフールイ)は、台湾の作家。5年間弁護士として活動し、その後映画の脚本・監督となり、さらに作家としても活動している。この『台北裁判』も、その経歴を生かして、台湾での裁判を中心に置いている。扱われているのも台湾における外国人労働者や台湾内での民族の問題、また死刑の廃止・存続の問題も絡んでおり、非常に重厚な内容になっている。その重いテーマを、短い章を積み重ねることで軽快に読ませるところはさすが。文庫本で650ページ程の小説だが、残り150ページの緊迫感は只事ではない。裁判小説の秀作。2025/02/21
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51
🌟🌟🌟🌟☆。これは「サスペンス」でも「ミステリ」でもない。「お仕事小説」「ノワール小説」という趣きを感じた。犯人は最初から分かっている。問題は「死刑廃止論」が高まる台湾で被告を死刑にするか否かで公設弁護人の主人公が裁判で争う。600ページを超える超大作。だけど超読みやすい。ワンエピソードが4〜6ページで薄い層のように少しずつ物語を重ねていく過程がとても良い。登場人物は最後までルビ付き。別紙に登場人物の説明書付き。確かに専門用語が乱立する場面もあるがギリ何を言っているか理解出来る。2025/03/18
きりん★
42
台湾の少数民族アミ族の漁業を営む船長一家が殺された。逮捕されたのはインドネシア人の船員で死刑判決が一審でだされた。その二審を担当することになったトン。果たしてその船員は罪を犯していたのか?死刑問題、外国籍労働者問題などテーマが重い中で、分厚い本ながらもサクサク読める。そして最後までとことん読ませる法廷ミステリー✨✨2025/01/19
てつ
35
初めて接した台湾の作家さん。日本に置き換えてもあり得る話で、リアル感が素晴らしい。改めて死刑制度の問題点と外国人裁判の難しさを実感する。2024/12/30