内容説明
台湾の少数民族・アミ族一家殺害事件で、インドネシア人の青年が逮捕された。公設弁護人の【 /トン】は、自身もアミ族出身だったが青年の弁護を引き受ける。しかし、青年は何も語ろうとしなかった。裁判はメディアの注目を集め、陰の組織が【 /トン】に圧力をかけはじめる。弁護士で映画監督でもある著者が描く迫真の法廷ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てつ
32
初めて接した台湾の作家さん。日本に置き換えてもあり得る話で、リアル感が素晴らしい。改めて死刑制度の問題点と外国人裁判の難しさを実感する。2024/12/30
BECHA☆
6
アミ族の佟寶駒は、現状に甘んじる同族から抜け出そうと進学し公設弁護人となって20余年。飲んだくれの父親に手を焼いている。代替役で公設弁護人に配属された司法官の息子連晉平は、佟寶駒の元でインドネシア国籍の船員が起こした殺人事件の弁護に関わっていく。先住民族、出稼ぎの東南アジアの人々、階級社会など様々に発生する軋轢が本来の優しさとすれ違う哀しみ。厚いけれど最後まで物語に引き込まれて読み切った。2025/01/13
ぎすけ
4
アミ族の公選弁護人の佟寶駒は、幼馴染みの鄭峰群の一家が殺された事件の容疑者、インドネシア人のアブドゥル・アドルの弁護をすることになり、彼の下で代替役を勤めることになった連晉平と裁判に関わることになる。リーガルサスペンスでありがちな結末ではなく、話は外国人が少数民族を殺したという話が、国の司法のあり方は、そして死刑の是非、という大きなテーマを持った話になっていく。これは台湾だけでなく死刑を廃止していない日本にも問いかける話になっている。2025/01/02
nizi
4
分厚いが章立てが細切れなので、見かけほど読破に時間はかからない。驚いたのは台湾の死刑制度。銃殺なんだ!?2024/12/30
Ryo0809
2
台湾の裁判を巡る熱気ある群像劇。先住民族、漢民族、労働移民などが混然一体となり、さらには法曹界と政治、そして巨大漁業産業の脱法行為が絡む…という仕掛け。移民による殺人事件に対しての死刑の是非を問うのがテーマだが、それだけでなく、現代台湾の複雑な国民感情や貧富の差、生々しい生活感など、読み処は多岐にわたる。ポピュリズムに傾く政治と感情論に奔る民意に一石を投じる法務大臣の仕掛けには、正直、震えるほど怖かった。スピーディな物語の進行は、TVドラマの脚本を思わせるが、疾走感があって惹き込まれた。2025/01/08