比翼の象徴 明仁・美智子伝 下 - 平成の革命

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比翼の象徴 明仁・美智子伝 下 - 平成の革命

  • 著者名:井上亮【著】
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 岩波書店(2024/11発売)
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  • ISBN:9784000245579

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内容説明

明仁と美智子は天皇皇后となり,平成の時代が始まる.二人は昭和天皇が果たし得なかった,戦争被害国の訪問をして和解に努め,災害被災地を訪れて被災者を慰めた.高齢による体力の衰えで国民に接する活動が難しくなったとき,明仁は退位の道を選ぶ.それは,平成がつくり上げた象徴像の総仕上げだった――.決定版評伝,ついに完結.

目次

第12章 父の残像と逆風
〈昭和64/平成元年〉
 「平成」の考案者は誰か
 「皆さんとともに日本国憲法を守る」
 史上最大の昭和天皇葬儀
 次々と進められる「平成流」
 即位後初の記者会見,「言論の自由は大切」
 宗教色の強い大嘗祭に公的経費
〈平成2年〉
 折口信夫の「秘儀」説で論争
 不幸な過去に「痛惜の念」
 「秋篠宮家の幾久しいみ栄えを祈ります」
 伝統と憲法の狭間での即位の礼
 国民が見た神秘と幽玄の儀式
〈平成3年〉
 過熱する皇太子妃取材
 雲仙・普賢岳噴火被災地で「膝をついて」見舞う
 平成初の外国訪問,東南アジアでは謝罪表現避ける
 初孫・眞子内親王の誕生
〈平成4年〉
 「お妃報道」の自粛協定
 万歳復活の「逆コース」
 保守派の反発抑え,天皇訪中を決定
 「中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました」
 北京・西安・上海で人々と交流
 小和田雅子,プロポーズを受諾
〈平成5年〉
 徳仁皇太子の婚約決定
 「雅子さんのことは一生全力で守る」
 天皇,皇后として沖縄を初訪問
 過熱し始めた皇后バッシング
 史上初めて国外での天皇の葬儀参列
 「悲しみと戸惑い」,“反論”後に皇后倒れる
 批判雑誌に向けられた銃弾

第13章 災害と慰霊
〈平成6年〉
 初めての激戦地・硫黄島,「如何ばかり君ら水を欲りけむ」
 訪米,政治利用批判再び
 年二回の外国訪問,皇后の体調不良
〈平成7年〉
 阪神・淡路大震災,人としての「体温」を示した平成流
 古代織物の復元に貢献した皇后の養蚕
 慰霊の旅「五十年の日々いかにありけむ」
 「あり方」が確立した節目の年
〈平成8年〉
 海外メディアが報じた雅子妃の「影の薄さ」
 「皇室があって良かった,と国民が安堵できるような」
 天皇誕生日祝賀でのペルー人質事件
〈平成9年〉
 根拠不確かな皇太子妃の懐妊報道
 超過密日程の南米二カ国訪問
 皇太子夫妻の不妊,悩み深き日々
〈平成10年〉
 即位10年目,受け入れられた人間的流儀
 元捕虜の抗議,英国訪問の試練
 「何人の言も鵜呑みにしない」研究姿勢
 人と人の間に「橋をかける」
 未来志向の韓国,溝が深まる中国

第14章 傷ついた人々の声を聞く
〈平成11年〉
 君が代の「君」は誰か
 正田英三郎の死
 被災地の復興状況視察が慣例に
 皇室の役割は「精神的な支援としての献身」
 雅子妃「懐妊の兆候」報道と流産
〈平成12年〉
 徳仁皇太子が「懐妊報道」を批判
 「国民の中に内在した存在であらねば」
 オランダ慰霊塔での長い黙兊
 良子皇太后死去,「在りし日の明るい声」
 三宅島噴火,避難の児童・生徒に心寄せる
〈平成13年〉
 雅子妃の二度目の懐妊
 阪神・淡路大震災被災地を復興状況視察で再訪
 火山活動が続く伊豆諸島へ
 愛子内親王誕生と女性天皇論議
〈平成14年〉
 「知らずしてわれも撃ちしや」
 韓国は「近くて遠くない国」
 東欧の旅で自由への戦いを称賛
 バーゼルで語った子どもたちへの希望
 天皇と皇太子夫妻の深い溝
〈平成15年〉
 前立腺摘出手術,「がんの転移はない」
 皇太子夫妻に第二子のプレッシャー
 公務削減の提案に「まだできる」
 即位15年で全都道府県を巡る

第15章 家族の苦悩
〈平成16年〉
 「国立劇場おきなわ」の開設
 衝撃の「人格否定」発言
 海外メディア「雅子さまは事実上の人質状態」
 「強制ではないことが望ましい」
 紀宮の婚約に微笑んで「おめでとう」
〈平成17年〉
 津波災害の教訓を訴える
 紀宮「皇后様にはたくさんの悲しみと癒えない傷み」
 サイパン島〈をみなの足裏思へばかなし〉
 「ドンマーイン」が懐かしく
 女性・女系天皇を容認へ
〈平成18年〉
 紀子妃懐妊でしぼんだ皇室典範改正
 ガスマスクを準備して三宅島へ
 タイ国王即位60年で旧交を温める
 「富田メモ」報道の波紋
 悠仁親王誕生の喜びと憂い
 「残念なのは愛子と会う機会が少ないこと」
〈平成19年〉
 「皇位継承の安定,課題はなくなっていない」
 初めて旧ソ連の地・バルト三国へ
 ブルーギルの異常繁殖,「心が痛む」
 年金と格差問題への懸念
〈平成20年〉
 宮内庁長官の異例の「苦言」
 保守による雅子妃バッシング
 復興した山古志を訪ねる
 「陛下は心労や心痛にじっと耐えてきた」

第16章 全身全霊の旅
〈平成21年〉
 退位の意思を打ち明ける
 結婚五十年でも「感謝状」
 カナダ日系人の苦難をねぎらう
 歴史が忘れられることこそ心配
 習近平「特例会見」の横車
〈平成22年〉
 愛子内親王の不登校問題
 参与会議で「摂政はよくない」
 狭心症が疑われる急な苦しみ
〈平成23年〉
 東日本大震災の発生
 「苦難を分かち合う」ビデオメッセージ
 七週連続の被災者見舞いへ
 悲しみの声を受け止め続ける
 雅子妃の「付き添い」でバッシング
 皇族数の減少は「緊急性の高い課題」
〈平成24年〉
 心臓冠動脈のバイパス手術
 土葬から火葬,陵の簡素化を検討
 エリザベス女王の即位六十年を祝う
 「忘れられた被災地」を訪問
〈平成25年〉
 「天皇の意に沿わない」政権の動き
 「屈辱の日」と「天皇陛下バンザイ」
 「水俣の胎児性の患者に会っていただきたい」
 改憲論議と五日市憲法
 天皇の立場は「孤独」
〈平成26年〉
 台風被害の伊豆大島へ
 「対馬丸」,同年代の犠牲者を悼む
 24年かけて完成した「昭和天皇実録」
 「争いや苦しみの芽となるものを摘み続ける」
 ベルギー元王妃葬儀へ,「命の弾丸ツアー」

第17章 退位への道のり
〈平成27年〉
 天皇の「十五年戦争史観」
 昭和史の専門家との交流
 「忘れられた戦場」ペリリューでの慰霊
 生前退位へ,水面下の動き
 終戦の日にあえて加えた「深い反省」
 首相官邸「退位は憲法上認められない」
〈平成28年〉
 フィリピン残留日系二世との出会い
 「比島戦没者の碑」での慰霊
 地震の熊本へ,「ためらひつつさあれども行く」
 想定外の「生前退位」報道
 「人々の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添う」
 「逆境に立ち向う」ハマギクの花言葉
 保守派による平成の象徴像の否定
〈平成29年〉
 退位は一代限りの特例法で
 最後の外国訪問,ベトナムとタイへ
 「退位特例法は皇室典範と一体をなす」
 退位の日をめぐるせめぎ合い
 「島々への旅」の実践,全都道府県二巡
〈平成30年〉
 11回目の沖縄へ
 日本最西端の岬に立つ
 「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」
 皇后の「献身と真心」をねぎらう
〈平成31年〉
 「象徴としての天皇像を模索する道は果てしなく遠く」
 退位は「象徴のかたち」の総仕上げの姿

 注
 あとがき
 明仁天皇・美智子皇后 年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

47
本書扉の裏に、「本書の記述はすべて筆者による取材と信頼を置ける資料に基づいており、想像、憶測に基づいたものはない。」云々と注意書きしてある。それだけに単調になりがち…の懸念が。それは読み進める都度、杞憂に終わる。空気は常に緊迫している。2025/04/24

あまね

22
下巻は、ご即位からご退位までの30年間の軌跡。途中、涙なしには読めなかった記述もありました。皇太子の時代から続けられた慰霊、鎮魂、そして国民に寄り添う姿は、ご即位されてからさらにご進化あそばします。お身体に鞭を打つようにして全国に向かわれるお姿は、すべての責をお二人で背負われているかのように鬼気迫るものがありました。当時、ニュース等で少しだけ流れる天皇皇后両陛下のご映像からは考えも及ばなかった両陛下の深い思いに、言葉もありませんでした。上皇上皇后両陛下に深い感謝を抱きながら最後のページを閉じました。2025/02/25

やいっち

6
本書扉の裏に、「本書の記述はすべて筆者による取材と信頼を置ける資料に基づいており、想像、憶測に基づいたものはない。」云々と注意書きしてある。それだけに単調になりがち…の懸念が。それは読み進める都度、杞憂に終わる。空気は常に緊迫している。2025/04/24

伊達者

2
大作も退位までの下巻となる。著者は日経記者で冨田メモのスクープで新聞協会賞。執筆にあたり資料として宮内庁記者クラブにあった膨大な過去の皇室新聞記事のスクラップを使用したそうだ。詳細な注釈で記載の根拠が示されている。下巻では上皇后に一層重点が置かれ,その思想性や文学的素養の高さと表現能力が平成流象徴天皇の演出者であることを示す。日本は災害の多い国であることを再確認させる。その都度上皇夫妻は現地を訪問して慰霊と慰めの旅を行ってきた。二人の数々の発言も詳しく記している。上皇の政治性のある姿も浮き彫りになる。2025/01/03

痴遊亭区路州

1
1989年1月に即位し、2019年4月に退位するまでの30年間にわたる、天皇と皇后の読みごたえのある伝記。皇太子夫妻、宮内官僚、政府、マスコミ等との関係や、外国訪問、日本各地での国民との触れ合いを詳細に描く。特に宮内庁長官らに退任の意思を伝えてから、退任を”達成”するまで足かけ10年も要したのは、大変だったと思う。「憲法に定められてはいるが、その『かたち』が明確ではなかった”象徴”を天皇は皇后と共に形作った」との著者の結論には充分説得力がると思った。2025/03/11

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