内容説明
昭和とは何だったのか?
関川氏の一連の作品は、この問題を考えるヒントに満ちている。
本作で描写される「戦後」は、貧困に苦しみつつ、つねに明日を信じて努力した時代であった。一瞬の光芒を放ちながら、やがて輝きを失い、うつろな社会へと変貌していくその短い青春の時間を、著者自身の経験に拠った、一人称視点の主人公によって織りなされる小説と、時代を映したベストセラー(『山びこ学校』から田中角栄『私の履歴書』まで)の評論で、交互に照らし出す。
巻末には、「自著解説」を新たに書き下ろす。
「私説昭和史」三部作の第一弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
45
谷口ジローと組んだ「坊ちゃんの時代」で初めて知った名前。もう随分前のことになるなぁ。にもかかわらずこの著者単独の本をしっかり読んだのは初めて。論評と小説が交互になる編集に奇妙なリアリティを感じつつ読み進む。著者とは10歳も違わない、私を可愛がってくれた先輩たちと同年代の話は、自分の子供時代も思い出させてくれる。水木しげるの昭和史とは全く異なるが、どちらも昭和なのだ。2025/03/21
hasegawa noboru
25
小節と評論各六篇が交互に配置されて成る。著者が生きた昭和という「戦後」の時代(一九七三年第一次石油ショックまで)を検証する。著者は一九四九年生まれだから、二四歳頃までの、自身の青春を振り返るということでもあるだろう。『山びこ学校』、石坂洋二郎の本、『にあんちゃん』『何でも見てやろう』、『二十歳の原点』、田中角栄の『私の履歴書』時々のベストセラーを取り上げた評論部分、私はひとつも読んでないが、時代の雰囲気はすぐに思い返されてよく分かる。小、中、高、大学とそれぞれの時代を扱った、作者をモデルとした一人称小説は2024/12/09
阿部義彦
18
中公文庫去年11月の新刊。もとは新潮文庫だった物を新たに本人の自著解説を加えた二次文庫です。主に亡くなった谷口ジローさんの漫画原作者として、知りましたがエッセイ、小説も好きな作家です。このシリーズは小説とベストセラー小説の評論の二頭立て馬車(オムニバス形式)で昭和の時代と心証を照らしだします。特に、素人の発表の当ての無い日記、『にあんちゃん』『二十歳の原点』が特に心に迫りました。名前だけ知っててでどちらも未読ですが、炭鉱労働者、学生運動に翻弄される、無垢の魂の奇跡が生々しい。残り二作も是非読みたい。2025/01/07
pulp
9
わたしは、このひとの書く文章がほんとうに好きだ。2024/12/04
s_n
2
旧版も読んでいて何回か読んでる。 名著だと思う。 再発したのらで推し活的に購入して、また読んだ。 評論と小説を、交互に置いた変わった本だが、関川夏央らしいと思う。2025/01/25
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