内容説明
仕事はぼちぼちで、海外旅行なんて行けないけれど、ルームメイトと乾杯する小さなテラスはある──『フィフティ・ピープル』のチョン・セランが、明るい未来が見えない世界だからこそ、ささやかな希望を失わずに生きる人々をおかしみをもって描く、掌篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
27
2011~22年まで、さまざまな媒体で発表された掌編や短編をまとめたもの。とてもとても良かった。何作も読んできたけど、たくさんの初めてのチョン・セランに出会った。あとがきにもあるが、長い小説よりストレートに、プラスにもマイナスにも彼女のエネルギーが伝わってくる。どんな時でもどこかに気楽さを抱えて腐らない、おかしいことはおかしいと声を上げる、そんなあっけらかんとした頼もしさに救われる。出会いについての話に光を当てられたら、という「スイッチ」が特に好き。これからもずっと読んでいきたい作家だと改めて感じた一冊。2024/12/08
kibita
13
掌編・詩・短編集。チョン・セランさんは色んな分野から「招ばれて」フットワーク軽く、でも核心をついたような掌編を沢山書かれているんだ。それらを読めてファンとしてとても嬉しい。まるで映画ナイトミュージアムだなと思った短編はやっぱりオマージュでとても楽しかったし、韓国のミレニアル世代に対する搾取やトリクルダウン理論通りにはいかないという「アラの傘」も鋭い。1篇終わる毎に作家自身が綴る解説が良く、構成に緩急というかリズムがあって全体的に読みやすかった。2024/12/14
おだまん
8
本当にどうしようもない世の中なんだけど、絶望せずに生きていく元気を与えてくれる本。「ヒョンジュン」に出てきた本がことごとく好きで嬉しい。2024/11/24
二人娘の父
6
「掌編小説」という呼び方があることを初めて知る。確かに手のひらに収まってしまうような短い作品たち。さらに作品ごとに著者の解説が入る。こんなにも親切な作品集はないのではないか。あっけなく感じるのか、続くであろう物語に思いを馳せるのかは、それぞれだし作品にもよるだろう。それにしたってチョン・セランである。どんなに短くとも描かれる物語は上質である。著者あとがきでは、率直に書き始めの頃の突き上げるようなエネルギーが亡くなっているという吐露も印象的だ。じっくりでもいいので、確実に創作活動を続けてほしいと思う。2024/12/26
Rinarnation
3
まさかチョンセランの掌編小説が日本語でよめるなんて!!という嬉しさで身震いです。掌編小説ゆえの核心をついた、良い意味で尖ってる文章たち。なんだかチョンセラン氏の頭の中を少し覗けたような、ますます好きが増した一冊です。2024/11/08