内容説明
日本最古の歴史書『古事記』で命じられた「校正」という職業。校正者は、日々、新しいことばと出合い、規範となる日本語を守っている「ことばの番人」だ。ユーモアを忘れない著者が、校正者たちの仕事、経験、思考、エピソードなどを紹介。「正誤ではなく違和」「著者を威嚇?」「深すぎる言海」「文字の下僕」「原点はファミコン」「すべて誤字?」「漢字の罠」「校正の神様」「誤訳で生まれる不平等」「責任の隠蔽」「AIはバカともいえる」「人体も校正」……あまたの文献、辞書をひもとき、日本語の校正とは何かを探る。校正者の精緻な仕事に迫るノンフィクション。
目次
第一章 はじめに校正ありき
第二章 ただしいことば
第三章 線と面積
第四章 字を見つめる
第五章 呪文の洗礼
第六章 忘却の彼方へ
第七章 間違える宿命
第八章 悪魔の戯れ
第九章 日本国誤植憲法
第十章 校正される私たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
140
「校正」がテーマだが、言葉に関する深い考察に導いてくれる抜群に面白い一冊。漢字・仮名のあり方、誤字脱字、校正者の誠実さなどの話題の中に、ヴィトゲンシュタインやソシュールが登場するのは想定内だが、デデキントやDNAポリメラーゼまで発想の翼が拡がるのは、流石、髙橋さん。6月に書かれたあとがきに「この原稿執筆中に、妻で校正者の髙橋栄美が癌と診断された。手術は無事成功し、妻は順調に回復しております」とある。ところが、つい1週間前、新聞に髙橋秀実さんご本人の訃報。私はこの人の文章が好きだったから、悲しくてならない。2024/11/21
ネギっ子gen
65
【文章とは、直す直されるものであって、書くものではない】校正者たちの経験や思考などを追って、その精緻な仕事に迫ったノンフィクションとしての文章読本。巻末に、参考文献。「あとがき」で、<「自分で書く」などと気張ると自分に縛られて身動きができなくなりますが、自らを埋める、なら煉瓦を積んでいくようで単純な手作業です。字は自分で考え出したものではなく、先祖代々、諸先輩などから学んだもので、本質的に見様見真似なのです。そして字が埋まったら、一つひとつ直していきます。書いて直すというより、直すために字を埋める>と。⇒2025/02/02
キク
61
高橋秀実さんの、多分遺作になるんだと思う。微妙に違う「言海」を270冊、「広辞苑」を100冊以上所有し、用例を確認する校正者などを紹介している。「校正者の視点が入ることで文章はひとりよがりを脱し、公共性や社会性を帯びる。彼らに読まれることで言葉は錬られ、開かれていく。世の中には優れた書き手などおらず、優れた校正者がいるだけではないか。」純朴なノンフィクションを書かれてきた高橋さんらしい。校正という作業の凄さが理解できる。校正を通さない文章で溢れるネットの世界は、ワープロ以上に日本語を変えていくんだろうな。2024/11/30
sofia
34
校正のことをいろいろな角度から述べている。一番びっくりしたのは、辞書をたくさん持っている校正者。中身が少し変わると同じ辞書を何回も買っている。校正の深すぎる話が多かった。しかし、戦前の「校正」の考察の文章がその時代の「字体」で載っているが、今、なんと読みにくいことか。活字は生きて動いている。常々ネットニュースの(校正をしているとは思えない)誤植を見つけてはぷんぷんしているが、それ以前の言葉一字の意味から問う人がいることはすばらしい。2025/01/16
愛玉子
26
「校正とは〜読むというより清掃に近い作業で、掃いても掃いても誤りは出てくる。掃けば掃くほど誤りは生まれるそうで、龍安寺の石庭みたいなものらしい」正書法がないという極めて珍しい正体不明の言語、日本語。正しさは時代によってうつろい、最終的に多数決で決まっていくというフリーダム。まさに言葉は生き物、そして文字は元来「いかさま」なのだ。そんな校正に携わる人々の言葉に対する熱量が激アツで、三浦しをん『舟を編む』を思い出したりも。文豪から日本国憲法まで幅広く「校正」という視点から捉え、やや強引ながらも面白かったです。2025/02/28
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