内容説明
自分の住んでいる世界に絶対はない。自分の価値観にも絶対はない。人間の弱さやもろさ、不条理さを描く別役実の傑作童話。
教科書にも掲載された短編「空中ブランコのりのキキ」を含む別役実童話の世界が、装い新たによみがえる!
空中ブランコのりのキキは、サーカス界のトップスター。しかし、そんな彼女の頭の中には、自分にしかできない三回宙返りを、いつか他の誰かもやってしまうのではないかという不安が…。予感は的中。はたしてキキに残された道は…。
『中学生の国語 1年』(三省堂)に掲載された「空中ブランコのりのキキ」。
他人や社会から求められる「自己」と自分自身が自覚する「自己」との間で、人はどのように生き、成長していくべきか、を投げかけています。
この「空中ブランコのりのキキ」を含む短編3編に加え、名作との呼び声高い長編「黒い郵便船」など、別役文学の傑作作品を収録しています!
その独自の世界観を、ぜひ本書でお楽しみください。
▼収録作品
街と飛行船
空中ブランコのりのキキ
夕日を見るX氏
黒い郵便船(その1 盲の馬 / その2 星の家 / その3 遠い街)
※本書は、1975年・三一書房刊『黒い郵便船』を底本に、新たな挿画とともに『空中ブランコのりのキキ』として出版するものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
100
表題作を含む短編3作と長編『黒い郵便船』を所収。いずれも数十年前に書かれたもので、童話という体裁ながら幻想的、哲学的なお話。“知”を欲することは“死”に近づくこと。4作ともに無常観が漂っているように思う。長編は特に気難しい物語だった。カタカナ語はすべて平仮名にされ、ロロ、ツツ、テテ、トト…など多勢の登場人物にこんがらがってしまう。吉田篤弘さんの『パロール・ジュレと魔法の冒険』と共通するものを感じた。どちらも充分読みこなせなかった悔しさもありつつ、とても惹かれる世界だ。2017/10/20
アマニョッキ
44
「夕日を見るX氏」のみ、はるか昔に読んだ記憶あり。有名な「空中ブランコのりのキキ」は初読です。幸せと悲しみはいつも背中合わせ。やっぱり別役さんは日本の才能でしかない。関係ないけれど、スチャダラパーは別役実さんが大好きで、一時期すごく意識しながらリリックを綴っていたそう。ワイルドファンシーアライアンスらへん。なんかすごくわかる!!「ヒマの過ごし方」は本当に名曲。スチャダラパーも日本の才能。すんばらしい。2020/09/06
へくとぱすかる
39
別役さんの童話は、いつも不思議さに包まれている。雰囲気のちがいは、おそらく論理のちがいなのだろう。普通はこうは考えないであろう、ややずれた考え方。それが通用するのは、陳腐な表現だが、「幻想」の世界だという気がする。「街と飛行船」をはじめ、ややレトロな、どこの国とも町とも思えない、メルヘンのためだけに設定されたような町。長編の「黒い郵便船」は、街そのものの成り立ちの謎を解くストーリー。社会的告発ともいえる事実と、民俗学的要素が結びつき、作者のしかける論理のずれのせいか、かなり怖さを感じる物語になっている。2015/01/18
Aaa
28
学校の授業で、学習した。この本を通して、「好きなことは命をかけてまで実行するものなのか」ということを考えた。その結果、個人的には命をかけてまでは実行しないでも良いと思った。なぜなら、命はなくなってしまったらそれ以上自分を高めることもできず、周りの人も悲しませてしまうからだ。だから、私は改めて命を大切にして行きていきたいと思った。2020/07/27
katsubek
24
教科書掲載の物語。復刊であっても復刻ではないのだろう。ともあれ、「黒い郵便船」の不思議な世界は楽しめる。海、港、夕日といった言葉で繋がってゆく物語たち。「白い大きな鳥」は何であったのかという謎は、ますます深まって、それ故にこそ、読む者を魅了する。そしてここに、「白」と「黒」という対立軸が見つかり、いよいよ興味は深まりゆく。キキやロロという名付けも、その意味合いのルーツを探りたくなる。2018/06/10
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