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内容説明
恋愛、結婚、ネコ学生組合への加入と、妻の浮気相手との決闘。そして上流階級体験。下巻では、若々しさと瑞々しい知性、気負いがぶつかり合う修業時代から成熟期まで、血気盛んな若者としてのムルの成長が描かれる。教養小説のパロディーと音楽家クライスラー篇の熱狂が奏でる二重小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
25
どこか釈然としない気分で読み終える。とはいえ小説がムルの自伝の体裁をとる以上、ここで終わるのは当然かもしれない。「編集者」が第三部を予告しているが、この本の刊行後間もなく作者ホフマンが死去したという事情はさておき、解説が指摘するように最後の部分が最初に戻る円環構造が完結していることからも、やはり続編はないものと捉えるべきだろう。より興味深い存在のクライスラーに関する部分は未完のままだが、これも偶々紛れ込んだ反古という成り立ちからは、こうあって然るべきか。解説では、特に二人のヒロインの読み解きが素晴らしい。2025/04/11
アドソ
15
クライスラーはホフマンの分身なのであろう。私小説を書くつもりでこの本を書き始めたのではなかろうか。しかしもしこれがクライスラーの伝記をひたすら書いた話だったらさぞかし退屈であったろう。ムル君の話を挟むことでほどよいメリハリが生まれている。が、このムル君も実はホフマンの分身なのではないかとさえ思える。というかホフマンが飼い猫ムルの目を通して眺めた世界というべきか。読んでいる間は楽しく、読後にはほとんど記憶が残っていないという不思議な話だった。2025/02/22
ハッカ飴
11
とてもおもしろかった。上流階級の人たちの空疎さや聖職者がよからぬことを企てたりするなど、そういう風刺はやっぱり小気味いい。2025/01/26
フリウリ
8
途中、音楽理論やら絵画理論やらが入り、やや中だるみするものの、結末に向けて一気にストーリーが展開します。最後に予告されている第3編は、著者死去により未刊に終わったものの、ホフマンは一気に書き上げる人なので草稿もメモもなかった、というのがおもしろい。本書上下(1編、2編)も一気に書き上げられたのでしょうが、楽曲にさまざまな形式があるように、ストーリー展開におのずから強弱、緩急がついてしまう技は、驚くべきものです。ムル君の語りから、シェイクスピア、ルソーなどの当時の受容状況がわかるのも興味深い。82025/08/23
のん
7
教養ある詩人(猫)のムル君とエキセントリックな音楽家クライスラーの物語。上巻に続き文はすらすら読めた(上滑り気味に)。200年前の作品なので取り上げられる当時の文学、音楽などなど知らないものも多く、風刺も含め面白く読めたかは…。ただ今回はホフマンに傾倒したシューマンとピアノ曲クライスレリアーナを理解するための読書だったので得たものはある(感覚的にですが)。二重小説が全体としては面白いのだけど(ネコ社会のところは愛らしい)、別々の2つの作品として読んでみたらどうなのだろう。2025/02/02