岩波新書<br> 学力喪失 - 認知科学による回復への道筋

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岩波新書
学力喪失 - 認知科学による回復への道筋

  • 著者名:今井むつみ【著】
  • 価格 ¥1,276(本体¥1,160)
  • 岩波書店(2024/09発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 330pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320340

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内容説明

乳幼児は驚異的な「学ぶ力」で言語を習得できる.しかし学校では多くの子どもたちが学力不振に陥り,学ぶ意欲を失ってしまう.なぜ子どもたちはもともと持っている「学ぶ力」を,学校で発揮できないのか.「生きた知識」を身につけるにはどうしたらよいのか.躓きの原因を認知科学が明らかにして,回復への希望をひらく.

目次

はじめに
第Ⅰ部 算数ができない,読解ができないという現状から
第1章 小学生と中学生は算数文章題をどう解いているか
1 算数文章題につまずく小学生
2 小学生の算数文章題につまずく中学生
3「意味の不理解」が引き継がれる
第2章 大人たちの誤った認識
1 テストと学力についての誤認識
2 知識についての誤認識
3 スキーマなしでは学習できない
第3章 学びの躓きの原因を診断するためのテスト
1 「たつじんテスト」の開発まで
2 「たつじんテスト」は思考力を測る
3 点数をつけるよりも大事なこと
第Ⅱ部 学力困難の原因を解明する
第4章 数につまずく
1 「数」はモノを数えるためにあるわけではない
2 分数というエイリアン
3 かけ算・割り算の意味がわからない
第5章 読解につまずく
1 「読める」とはどういうことか
2 問題文を理解するための語彙が足りない
3 単位,時間,空間のことばを理解できない
4 行間を埋めるための推論ができない
第6章思考につまずく
1 認知処理の負荷に押しつぶされる
2 状況に応じた視点の変更ができない
3 パーツの統合ができない
4 モニタリングと修正ができない
第Ⅲ部 学ぶ力と意欲の回復への道筋
第7章学校で育てなければならない力――記号接地と学ぶ意欲
1 生成AIと記号接地
2 子どもはどのように記号接地しているのだろうか?
3 アブダクション推論とブートストラッピング
4 自走できる学び手へ
第8章 記号接地を助けるプレイフル・ラーニング
1 プレイフル・ラーニングの考え方
2 時間概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践1
3 分数概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践2
4 知識を身体化できるのは学び手のみ
終章 生成AIの時代の子どもの学びと教育
参考文献
図版出典一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

126
本書は、本文中でも繰り返し主張されているように、社会の全ての大人、取りわけ教育に関わる仕事をしている人々には必読の文献であると思う。著者の研究グループは、学力回復を図る方法として、こどもたちの多くが困難を感じている「算数文章題」の解法を分析することから始める。見えてきたのは、子どもたちは「割る」「掛ける」「分と時間」といった術語の意味理解が不十分で、問題文の正確な受け取りができず、正解にたどり着けないということである。その理由として、著者は問題解決の上で重要なスキーマ(人が経験から導出した暗黙の知識)が間2024/10/15

けんとまん1007

122
情報と知識と知恵という3つの言葉が浮かんだ。情報を、いくら繰り返し与えても、それが認知されない間は知識にならない。ということは、知識を活かした知恵にもなりえない。その仕組みを、丁寧に書かれていて、なるほどと思うことが多い。その根底にあるのが、そもそも学力とな何か・・という問いだと思う。学力は、学ぶ力である筈なのが、いつの間にか記憶力になっているように思う。わからなくなった時に、一次的に思考を留保することができるかどうか。そこで、違う見方ができるかどうか。そんなことを思う。2024/12/06

どんぐり

83
慶應大学を今年3月に定年退官した「学び」の研究者が書いた本。算数ができない、読解ができない子どもたちの学力喪失は、どこから来ているのかを認知科学の視点から解き明かす。アカデミックペーパーに出てくる「記号接地」「演繹推論とアブダクション推論」「二段論法と三段論法」「ブートストラッピング」「スキーマ」などの鍵概念を一般向けに解説している。これを読んで、小学校高学年で算数につまずいたぼんくら頭の自分を思い出した。そこには記号の意味がわからない、点が面に広がらない記号接地問題があったんだな、と納得する。→2025/05/18

南北

82
小学生向けの算数のテストを通じて、子供たちの学ぶ力がなぜ十全に発揮されないのか、その原因と回復への道筋を示した本。どういう知識を持っているかではなく、その知識をどう「生きた知識」として現実の世界に適用していくか、そのために記号接地とアブダクション推論が必要であるとしている。概念の記号接地を自ら抽象化できるか、それともAIの出した答をそのまま受容してしまうかによって今後分断が生じるとする点は特に納得できる見解だと感じた。本書は『算数文章題が解けない子どもたち』の解決編ともいえるもので良書に出会えたと感じた。2025/04/25

本詠み人

71
著者が広島県教委と共同開発した「たつじんテスト」小・中学生版は、子どもたちの数の理解や読解力、思考力等を測りつつ、躓き箇所が分かるテストらしい。単に学力を測るだけでなく、一人ひとりの学びに役立つこうしたテストが既にあるということが感慨深い。学力の元となる言葉の意味の拡がりを子どもたちはどうやって身につけているのか。先日読んだ体験格差じゃないけど、認知機能の発達に伴い、何かを見たり聞いたりお喋りしトライ&エラーを繰り返して身につけるものだとしたら、その経験の多寡が将来の子どもの学力に繋がっているのだろうか。2025/06/29

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