岩波新書<br> 学力喪失 - 認知科学による回復への道筋

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岩波新書
学力喪失 - 認知科学による回復への道筋

  • 著者名:今井むつみ【著】
  • 価格 ¥1,276(本体¥1,160)
  • 岩波書店(2024/09発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320340

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内容説明

乳幼児は驚異的な「学ぶ力」で言語を習得できる.しかし学校では多くの子どもたちが学力不振に陥り,学ぶ意欲を失ってしまう.なぜ子どもたちはもともと持っている「学ぶ力」を,学校で発揮できないのか.「生きた知識」を身につけるにはどうしたらよいのか.躓きの原因を認知科学が明らかにして,回復への希望をひらく.

目次

はじめに
第Ⅰ部 算数ができない,読解ができないという現状から
第1章 小学生と中学生は算数文章題をどう解いているか
1 算数文章題につまずく小学生
2 小学生の算数文章題につまずく中学生
3「意味の不理解」が引き継がれる
第2章 大人たちの誤った認識
1 テストと学力についての誤認識
2 知識についての誤認識
3 スキーマなしでは学習できない
第3章 学びの躓きの原因を診断するためのテスト
1 「たつじんテスト」の開発まで
2 「たつじんテスト」は思考力を測る
3 点数をつけるよりも大事なこと
第Ⅱ部 学力困難の原因を解明する
第4章 数につまずく
1 「数」はモノを数えるためにあるわけではない
2 分数というエイリアン
3 かけ算・割り算の意味がわからない
第5章 読解につまずく
1 「読める」とはどういうことか
2 問題文を理解するための語彙が足りない
3 単位,時間,空間のことばを理解できない
4 行間を埋めるための推論ができない
第6章思考につまずく
1 認知処理の負荷に押しつぶされる
2 状況に応じた視点の変更ができない
3 パーツの統合ができない
4 モニタリングと修正ができない
第Ⅲ部 学ぶ力と意欲の回復への道筋
第7章学校で育てなければならない力――記号接地と学ぶ意欲
1 生成AIと記号接地
2 子どもはどのように記号接地しているのだろうか?
3 アブダクション推論とブートストラッピング
4 自走できる学び手へ
第8章 記号接地を助けるプレイフル・ラーニング
1 プレイフル・ラーニングの考え方
2 時間概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践1
3 分数概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践2
4 知識を身体化できるのは学び手のみ
終章 生成AIの時代の子どもの学びと教育
参考文献
図版出典一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

106
本書は、本文中でも繰り返し主張されているように、社会の全ての大人、取りわけ教育に関わる仕事をしている人々には必読の文献であると思う。著者の研究グループは、学力回復を図る方法として、こどもたちの多くが困難を感じている「算数文章題」の解法を分析することから始める。見えてきたのは、子どもたちは「割る」「掛ける」「分と時間」といった術語の意味理解が不十分で、問題文の正確な受け取りができず、正解にたどり着けないということである。その理由として、著者は問題解決の上で重要なスキーマ(人が経験から導出した暗黙の知識)が間2024/10/15

けんとまん1007

96
情報と知識と知恵という3つの言葉が浮かんだ。情報を、いくら繰り返し与えても、それが認知されない間は知識にならない。ということは、知識を活かした知恵にもなりえない。その仕組みを、丁寧に書かれていて、なるほどと思うことが多い。その根底にあるのが、そもそも学力とな何か・・という問いだと思う。学力は、学ぶ力である筈なのが、いつの間にか記憶力になっているように思う。わからなくなった時に、一次的に思考を留保することができるかどうか。そこで、違う見方ができるかどうか。そんなことを思う。2024/12/06

うえぽん

56
認知科学・発達心理学の専門家が、小中学生の学力不振の原因として、分数等の概念に係る「記号接地」ができていない問題を指摘し、具体的処方箋まで示した意欲作。教員と共に作成した「たつじんテスト」の解答の分析から、大人は子供が何を理解していないかを理解していないと指摘。文章題の意味を理解できず当てずっぽうに表記された数字を使った計算式を作成して誤答する子供と、記号接地できないため東大二次試験の英語は8割正解できても数学は1点だったChatGPTをパラレルに論じた点が面白い。教育関係者やAI信者に特にお勧めしたい。2025/02/12

壱萬参仟縁

44
S図書館。ゴシック太字だけでも十分勉強になる。教育者の仕事:死んだ知識を生きた知識に、使える知識に、さらに、組み合わせ拡張させて新知識を自分で創造できるように教育する(39頁)。スキーマ:学習者が経験から導出した暗黙知(43頁)。本当の学力は自ら学ぶ力(54頁)。躓きは、思考の制御の問題(188頁)。教育の役割:認知能力で思考を工夫、思考バイアス、思考スタイルの自制(191頁)。評価:自走した学び手に、充実した生活を送れているか(297頁)。新著も読みたい『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』2024/12/21

よっち

43
学校では多くの子供が学力不振に陥り学ぶ意欲を失ってしまう。なぜ子どもたちはもともと持っている学ぶ力を学校で発揮できないのかを解説した1冊。小学生や中学生が算数や数学の文章題でなぜつまづくのか。意味の不理解が引き継がれて分からなくなっていく構図を解説していて、数と様々なもの関係への理解や分数・少数・整数などとの関係、読解の読む行為の複雑さ、認知処理の負荷が追いつかない、パーツの統合ができないといった問題の本質に踏み込んでいましたが、これをしっかり分かるように言語化して教えることの難しさを改めて痛感しました。2024/10/13

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