内容説明
現代人はいま恐怖心と猜疑心に満たされており、「友/敵」思考が過激化する社会に生きている。ネットリンチが日常風景となった日本社会。そんな現代の闇を直視し抗うための”知恵と教養”が詰まった一冊。「ナチ・プロ」「統一教会」「ホスト問題」「AIの台頭」「安倍国葬」「強制する社会」etc…。哲学者・仲正昌樹が「友/敵」思考が過激化する現代社会を鋭く分析し、この先の世界を予測する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
195
元統一教会信者として不当な糾弾を受けた著者の体験が、色々な形で反映されている。ネットを中心に、嗜虐と自己満足の発言が恰も思想であるかのように横行し、対話が成立しない状況に対して、「キモい」「汚らわしい」で人を評価するのはやめてくれ…という明快な主張が心に響いた。一方で、誤解や混乱を招く記述も多く感じた。例えば、楽に学べる系の本を検証せず鵜呑みにするのは良くない…とあるが、主観的な所や検証の難しさは本書にもある。しかしそれは本書の性格上、仕方なく思えた。最後の全体主義の話は、見えない敵を意識せねばと再確認。2024/09/23
ふみあき
80
少し前に話題になった『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の著者と、そのシンパへの批判などを収めた時評集。全編に著者の怒りが横溢しているが、それなら論敵の実名を挙げて論難してくれる方が、読者としては面白かった(舛添要一の名前は出てきたけど)。しかしSNSの普及もあってか、右も左も情け容赦なくなっている。「“敵”を悪魔化し、殲滅することが正義だと思い始めたら、自分の方が悪魔になっている、という、1990年代には当たり前だった議論が、今ではほとんど通じなくなっている」という述懐には、満腔の賛意を表したい。2025/06/03
ころこ
46
人文系の思想を背景にした、ここ数年の出来事の時評。10ページ位の文章が内容ごとにまとめられている。学術的で難解な言葉は少なく、常識的に書かれていて平易だ。本書は総じて、所詮は社会の複雑さに耐えることしか出来ない。耐えられずに簡単に答えを求めてしまうから、善悪をはっきりつけて、悪に対して容赦ない攻撃をしてしまうという社会の病理を論じている。最初に『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の著者と、それに感化された読者の振舞いについて批判している文章はなかなか勇気がいる。著者が「ナチ・プロ」と名付けたナチスを2024/11/28
Aster
18
まぁ説得力のあることを言ってるけどなんか心に残らん2024/10/23
Kooheysan
11
2020年のコロナ禍以降の社会時評。自分と違う意見の人に耳を傾けず、簡単に「敵」認定する社会に対する違和感の表明といったところ。知ったかぶりのように物事を語らず(特にネット空間)、簡単に片づけすぎず、もっとじっくり考えましょう、と。自分はちゃんと「人間」をしているか考えましょう、と。それにしても、「人間」を信じないとこういうことってなかなか言えない気がします。2024/10/02