内容説明
NYタイムズ紙が選ぶ「21世紀の100冊」
作品集累計15万部突破!
一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにいられない。
このように書く作家はほかにはいないと、何度でも思う。
――訳者あとがきより
中学でスペイン語を教える新米女性教師が、
聡明な不良少年のティムにとことん振り回される(「エル・ティム」)。
夫を失った傷を癒やすために訪れたメキシコの小さな漁村で、
女がダイビングを通じて新たな自分と出会う(「すべての月、すべての年」)。
世界中で驚きと喜びをもって迎えられた、至高の短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫羊
30
「掃除婦のための手引き書」に引き続き文庫版を読んだ。もともとはひとつの作品集。むごい話なのだけれどどこか救いがある作品もあれば、悲惨すぎて暗澹とした読後感しか残らない作品もあった。ルシア・ベルリンにしては凡庸という作品が1作だけあったが、あとは傑作揃い。いろんなレビューでも評価の高い「視点」が特に良かった。2024/10/07
tsu55
28
ルシア・ベルリンの短編集『A Manual for Cleaning』の中から『掃除婦の手引書』に収められなかった19の作品が収録されている。 自身の体験をもとにした短編集だそうだけれど、日本の私小説とはちょっと違うのは、じめじめしていなくって、むしろさばさばしてるというか、清々しさを感じるところ。 ルシア・ベルリンって、写真で見ると美貌の女性だけれど、作品のなかの彼女はなかなかオットコマエ。 2024/10/25
chanvesa
27
「ミヒート」のように絶望的で読んでいてつらくなるような短編、「虎に嚙まれて」のように希望に転換する短編もある。最も印象に残ったのは「笑ってみせてよ」。「ありのままの自分でいい、自分のことだけ考えていてもいいって思わせてくれるの。わがままでいいんだって。」(323頁)といカルロッタ(マギー)のジェシーとの関係性は、弁護士ジョンと妻シェリルとのそれにはなりえなかった。ジョンはうらやましかったであろう。ラストの雨の中の二人の姿を見ているジョンと同じように、私も二人を見送っていた。そしてこの短編は涙を誘う。2025/01/05
Porco
18
訳者の岸本佐和子さんはあとがきでルシア・ベルリン短編作を捨て曲無しのアルバムと評している。これは正しいと思う。とてもタフだが世界を巡ればどこかにはいるだろう登場人物たちの物語はどれも安定して高い品質で、一つの素晴らしいアルバムを聴き切ったようなそんな読後感だ。2025/03/15
a*u*a*i*n34
12
本作の感想を書く前に前作の「掃除婦~」の自分の感想を見返しました。原文、岸本さんの翻訳、クラフト・エヴィング商會の装丁すべてが素晴らしいと書いていて、それは本作もまったく揺るぎませんでした。今回は文庫で読んでしまって装丁の素晴らしさが半減してしまっているのがちょっと残念ですが。次作も必ず読みたいです。2025/01/15