内容説明
独自の世界で勝負できる書き手だと思う。--東野圭吾
頭抜けて面白かった。--綾辻行人
まんまと作者の術中にはまった。ーー有栖川有栖
エンタメとして読ませるテンポの良さも素晴らしい。ーー辻村深月
潜入取材シリーズとなれば喜んで追っていきたいと思います。――湊かなえ
あらすじ
たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。
文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?
フェイクが氾濫する時代の、「真実の物語」が始まった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
331
江戸川乱歩賞受賞作を毎年楽しみにしています。今回は第70回記念選考会で2作受賞とのことです。本書は、設定に少し無理はありますが、著者が江戸川乱歩賞に何度かノミネートされているだけあって、読み易く楽しめました。もう一作は改稿が必要とのことなので、出版までに多少時間がかかりそうです。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003940282024/09/16
パトラッシュ
311
乱歩賞史上初の殺人事件が絡まない受賞作。ドーピングや密輸など従来にない要素を盛り込み、若い雑誌記者が潜入取材を経験し成長していくプロセスはエンタメとして楽しく読めたが、これがミステリの新人賞作品と言われると違和感が拭えない。多くの選考委員がユーモアミステリと受け取っていたが、ドーバーやフロストのような人格破綻的キャラも出てこない。純粋なお仕事小説であり、サスペンス要素が皆無なため結果的にそう見えたのだ。犯人の抱える悪の大きさ、探偵との頭脳戦を期待すると裏切られるので、どこまで許容できるかで読者を選ぶ作品。2024/09/27
hirokun
161
★3 第70回江戸川乱歩賞受賞作ということで、図書館に予約して読み始めた。江戸川乱歩なので推理小説を前提としているのだが、私にはユーモアお仕事小説のような感触を強く受けた。読みやすい文章と、ドーピング検査で検出されない筋肉増強剤という私の知らない分野を謎解きの切り口にしており十分に楽しめた。あまり悩まずに読める推理小説もあるのだな?2024/09/26
KJ
155
薬物疑惑から浮かぶボディビル競技の闇。不正確な知識は無駄で逆効果。理論に基づく効果的な筋トレを学べる。体と心は連携する。肉体を鍛える事で精神も変化する。過去を記憶する筋肉。意外な身体的特性が鍵になる。筋肉を欲する人間の本能的欲望の間隙を突く薬物。些細な証拠から真相を追究する記者の執念。雑誌を売る為の巧妙な戦略。暴走するストーカーの異常な思い込み。地道な努力と成長が必要な対象こそ憧れる価値がある。重厚や高尚のみが小説ではない。軽量級故の物足り無さはあるが読み易さは娯楽として面白い。謎を解明する快感は共通だ。2024/10/31
hiace9000
151
大物アイドル大峰颯太。たった3カ月で肉体改造を成し遂げた彼の筋肉は、「本物」か、それとも「偽物」="ドーピングによって得たもの“かー。大手出版社に入社するも希望の文芸部ではなく、週刊誌編集部配属となり仕事にも精の出ない新人記者・松村。彼に下った指令は、大峰のドーピング疑惑の潜入取材。自身史上初の筋トレに乗り出すなかで、ふと閃く疑惑解明に向けた起死回生の一手。しかし、そこには予想だにせぬ黒い罠がー。まさかのネタから紡ぎだす、読んだことない「マッスル・ミステリー」ここに。筋トレマニアならずとも楽しめる作品だ。2024/09/23
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