内容説明
太閤秀吉が病没した。押し寄せる大乱の気配。塞王・飛田源斎は、最後の仕事だと言い残し、激しい攻城戦が予想される伏見城へと発った。代わって、穴太衆・飛田屋の頭となった飛田匡介は、京極高次から琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。立ちはだかるは、国友彦九郎率いる国友衆と最新の鉄砲。関ヶ原前夜の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける! 「最強の楯」と「至高の矛」――激突する二つの魂。その闘いの行き着く先は? 第166回直木賞受賞作品、下巻。
目次
第六章 礎
第七章 蛍と無双
第八章 雷の砲
第九章 塞王の楯
終
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
413
今村翔吾の文体と語りの方法に慣れたのか、上巻よりは小説世界に投入できたように思う。この小説の眼目は、匡介を頂点とした石積みの穴太衆と、彦九郎を頭とあおぐ鉄砲鍛冶の国友衆に主軸を置き、大名をはじめとした武士たちの戦国乱世ではなく、あくまでも技術者の側からそれを描いて見せたことにあるだろう。そのことによって、間接的に京極高次や立花宗成らをも描き出したのである。そして、その限りではそれは成功を収めているだろう。一方、彼らに共通の目的であった戦乱を終わらせる云々は、余計だったのではないか。2024/07/16
鉄之助
238
上巻の面白さ以上の展開。綿密な取材に裏打ちされた穴太(あのう)衆の心情が直に伝わった。鉄砲の球が石垣に当たったとき発する音「石鳴き」。武士も付近の民も一緒に城に避難する「諸籠り(もろごもり)」…などなど初めて聞く美しい日本語で当時の様子が映像を見るように感じられた。石垣職人VS鉄砲職人「国友」との戦いも読みごたえ十分。「楯と矛」のせめぎ合いに圧倒された。2025/03/09
カピバラKS
130
●弱将が寡兵で守る城塞を、名将が新兵器を携えて大軍で包囲攻略する。果たして、城塞は守り切れるか。この無理ゲー展開を、熱気と疾走感に加え、知的刺激も交えつつ、描く。のめり込むようにイッキ読みした。●ところで、戦国乱世の権力者が、自らの命を賭して、民衆の安寧のために戦争を遂行することがあり得るのか。先の大戦の記憶が濃厚な昭和期では、あり得ないという空気感が支配的だったろう。人権意識極薄の戦国期の実像とも乖離している。●しかし令和期には、相応のリアリティが認められているもののようだ。現代日本の平和安穏を寿ぐ。2025/06/18
クプクプ
89
私のような歴史のことを知らない素人にも、手に汗握る面白さが伝わってきました。文庫本は、下巻で内容が上巻とガラッと変わります。飛田匡介の大津城の水城の、石積みの、本当に大事な部分が、戦の最後に鍵を握ります。近江の国のことも、琵琶湖のことも、雰囲気が、伝わり、男性の力の使い方も、攻撃したり守ったりと、人生の矛盾を、土地と時代を背景に力強く丁寧な筆致で描かれていました。私は歴史に疎いので、関ヶ原の描き方の工夫には触れません。加藤シゲアキの解説も、わかりやすかったです。この先も、苦手な時代小説に挑戦していきます。2025/08/19
Willie the Wildcat
87
両雄対峙、辿り着く「青山白雲」。源斎の”因果”を肌で感じ、高次の民への想いを民が体現するのを目の当たりにして、それを実感。伊予丸の篝火が、両者の心に光を灯した感。最後の件で、彦九郎が語る矛と楯の必要性と矛盾。何事も「使い方=ヒト次第」であり、痛みを伴わないと学ばないヒトの愚かさを示唆。必須の過程ではあったが、ヒトの欲や驕りが目を曇らせ、矛盾のループを迷走。原点回帰できるのもヒト也。夏帆との祝言での〆、グッとくるものがある。Happily ever after♪2025/01/11
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