内容説明
時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人“穴太衆”の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人“国友衆”の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念の持ち主同士に対決の時が迫る! 「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極のエンタメ戦国小説!! 第166回直木賞受賞作品、上巻。
目次
序
第一章 石工の都
第二章 懸
第三章 矛楯の業
第四章 湖上の城
第五章 泰平揺る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
401
今村翔吾は初読。時は戦国時代の末期から秀吉が没するまで。城の石垣を築くことに特化した穴太一族の匡介を軸に物語が展開する。一方では攻撃をこそ本分とする国友衆の集団がいる。構図としては、全く矛楯そのものである。また、国友衆の論理は銃砲を私有することが安全に繋がるといった、アメリカのライフル協会ばりのそれである。上巻の限りでは、そうした図式的な構造の硬さばかりが目立つようだ。京極高次や初、夏帆を登場させることで、小説に膨らみを持たせることを図ってはいるが、残念ながら人物像の物語内での自由度がいずれも低い。2024/07/15
鉄之助
209
石垣職人”穴太(あのう)衆”を主人公に、これまでにない視点で戦国から江戸初期にかけての激動をリアルに捉えたドラマだった。乱世から泰平に移り変わって、城や石垣の役割にも変化…その時代が見事に描かれていた。352ページを一気読み。石垣の「野面(のづら)積み」が原始的で古臭い、と勝手に思い込んでいた自分が恥ずかしかった。石組みは”人組み”。職人たちのネットワーク、チームワークで成し遂げる凄い技術だったことに驚いた。2025/03/02
カピバラKS
119
●主人公を武将ではなく職人とした異色の戦国軍記譚であり、アツいお仕事小説である。●まず、石垣作りのトリビアが面白い。ぴしりと石が噛み合った石垣より、計算し尽くされた「遊び」のある石垣の方が堅いとは、心に響く知見だ。 ●また、集団作業のハウツーは、戦国時代の石垣職人衆でも、令和の職場でも、相通ずる。上長の者は、常にアクシデント予防の目配りを欠かさず、空気を読んで自分に非がなくてもさらりと一言詫びる気配りが肝要だ。カピバラKS(五十代)も心得たい。2025/06/04
bookkeeper
88
★★★★★ 初読。戦国時代末期、一乗谷城の落城時に孤児となり石垣職人穴太衆頭領に拾われた匡介。才に恵まれ頭角を現すが、折しも世を席巻しつつあった鉄砲鍛冶の彦九郎との対決が迫っていた…。あらゆる攻撃を防ぐ防備か、圧倒的な武力か、手段は両極端ながら共に泰平の世を実現せんとする2人の天才。石垣の組み方や生産・輸送・構築のシステムなど眼から鱗の奥深さ。京極家の大津城補強で名を挙げるも、彼らが良い人な分、変なフラグが立ちまくっていて胸がざわざわします。うーん、いいね! 「これにて大津城は完全なる水城となります」2025/04/15
じいじ
87
やっぱり思ったとおり、今村祥吾の時代小説は面白いです。いまも読みつづける山本周五郎や藤沢周平の時代小説とは少々感触が違います。例えば今作は、織田信長の戦国時代でも、登場する人物からは現代に生きる人のような親近感を感じます。築城の苦労ばなしは面白かったー石垣を切り出す人間、運搬を担当する人、現場で積み上げ施工する人…その各々に長けた人がいるから、あの美しい城ができるのです。この最強の「楯」をつくる者がいれば、それを「矛」で突破する者が出てくるのが戦国時代です。一気に下巻へ…2025/05/28
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