内容説明
比叡山麓の八瀬に住む人々は帝を守る鬼の子孫だと自らを誇る。里の娘かやは、貴人が囲う美貌の男妾、夜叉丸の世話をするうちに彼の苦しみを知り……(「鬼の里」)。仏道に邁進する私は、煩悩に溺れる者たちに呆れて比叡山を下りた。しかし洛中の六角堂で百日参籠を始めると、蠱惑的な香りの花を手に女が私を惑わせる……(「愚禿」)。嫉妬に劣情、尽きぬ欲望。男女の生き様を炙り出す京都時代短編集。(解説・細谷正充)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
桜もち 太郎
12
平安から江戸までさまざまな時代の短篇集。史実に沿った作品もあり興味深く読むことができる。なかでも良かったのは「ざこねの夜」だ。京都大原の里で節分の夜に行われる男女がまぐわう物語。性に興味を持ちすぎた15歳の少女の体験が生々しい。淫乱女の一代記、これぞ花房作品といったところだ。「愚禿」も良かった。性欲と煩悩から逃れたいと10歳で得度した29歳の僧侶。百日参籠を心に決め修行するが、毎日自慰に励み煩悩と妄想にまみれてしまう童貞僧侶。最後の3行で「女犯の夢告」の親鸞と明かされる。読みやすく深みのある一冊だった。2024/10/01
Ryo0809
3
短編6編からなる時代小説。平安末世から鎌倉初期、室町時代、戦国時代、江戸時代初期と時代は移れども、いつの世にも漂う煩悩の妖しい空気感を描き出す。庶民の猥雑な生活感、仏門、武門、権門の裏側にある逼塞感など、人間のドロドロした面を捉えている。軸は京都。最後の一話は、大奥という江戸の裏舞台装置が京都の影響力をどれだけ怖れていたかを作品にしたもので、斬新な着想に思えた。どの作品も、短編としてのまとまりに優れている。2024/08/30
ニコラス@ケンジ
0
今回はエロ重視ではなく 普通によくできた歴史ものみたいな感じ 親鸞のやつと 大奥話が面白かった2024/09/21