内容説明
白い部屋に閉じ込められた333人の石井。失敗すれば即、爆発の3つのゲームで試されるのは、運か執着心かーー。
14歳の唯は死にたかった。理由なんてなかった。何度も死のうとした。死ねなかった。今、はじめて生きようと思った。この理不尽な遊びから抜け出すために。
探偵の伏見と蜂須賀の元に、石井有一という人物を探してほしいという依頼がきた。劇団の主宰が舞台での怪演を目の当たりにし、その才能にほれ込んだ矢先の失踪だった。
唯と有一の身に何が起きたのか、そして二人の生死の行方はーー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kanonlicht
174
333人の石井によるたった1人の生き残りをかけたデスゲーム。著者自身が本書のなかで類似作品をいくつか並べているようにだいぶ使い古された設定だけど、きちんと納得できる理由があったので良し。自我、存在、死生観など前作「死んだ山田~」にも通じるテーマが散見され、なるほど著者の書きたいのはこういうことなのね、と理解した。会話のテンポや間の取り方はさすが。さらに今回は登場人物たちの言葉にもちょっとした工夫がされている。次回予告の3作目はどんな設定でくるのか楽しみ。2024/08/16
道楽モン
156
『死んだ山田と教室』の作者による2作目。すでに次作も刊行予定で、出版社から期待されてんなーと思いながら読んでみた。で、いきなりデスゲームものかぁ〜と脱力。こんな手垢にまみれた設定で、どうすんだよ。と、思いきや最後で逆転。なるほどね~。文中で歴々のデスゲーム物にわざわざ言及している理由が、実に重要な布石となっておりました。ということで、作者の実力は間違いない。エンタメ路線には次々と新人作家が乱入して来るのが当然だけれど、様式をひとひねり出来る新人は少ない。次作および次々作の戦略を楽しみに待っております。2024/08/19
昼寝ねこ
151
メフィスト賞を受賞した『死んだ山田と教室』からの2作目。石井姓の人ばかり333人も集められてデスゲームが始まる。ストーリーやゲーム内容に既視感ありありだが、行方不明者を探す探偵パートと交互に語られるのでグロいのに緩急をつけたスピード感と妙な軽さがあって一気読みしてしまう。真相は2/3ぐらいでほぼ読めてしまい、こちらも既視感が漂うのは否めないが先行作品の設定と展開をうまく組み合わせて再生したなという印象。未来を感じさせるラストなので読後感は悪くない。デスゲームにさほど抵抗がない人なら面白く読めると思う。2025/06/12
のぶ
141
前作の「死んだ山田と教室」もある意味変な作品だったが、本作もかなりトリッキーだった。探偵の伏見は、高校の同級生だった鶴田から人探しの依頼を受ける。鶴田の主宰する劇団の劇団員 石井有一を探して欲しいと。芝居の千秋楽前日に何の前触れもなく姿を消したのだった。別のパートで並行して始まっているのは333人の石井の強制参加のデスゲームだった。この部分「地雷グリコ」を思わせるところもあるが、その先は全く違っていた。何故このようなゲームになったのかがわかったときに、有一の人物像が明らかになる。最初から読み返したい一冊。2024/09/30
hiace9000
130
ネタバレ厳禁のシリアス&超エンタメ金子劇場 第二弾。『死んだ石井…』は単体での教室スピーカー憑依ではなく、“大群”で? 乗っけからグロ系333人の石井によるデスゲームの展開。だが、何か違和感が…それに参加者自体が気づくところから、かつて未読の独自展開が始まる。しがない小劇場の劇団員・石井有一の失踪。彼の捜索を依頼された探偵・伏見と蜂須賀。二人のコミカルで軽妙な掛け合いは前作『山田』同様、色濃い「死」の中和剤となっている。シリーズは死を冒涜する作品では決してない。死から生の有り様を見つめ、真摯に説くのだ。2024/09/21