内容説明
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
351
朝井 リョウは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 久々の小説は「正欲」の進化系かと思いきや、故橋本治が憑依したような作品でした。本年度一番の衝撃作❓❓❓ https://www.shogakukan.co.jp/pr/asai_seishokuki/2024/10/21
パトラッシュ
328
人の中に棲む人ならざる意志が語り手とは、山田詠美『アニマル・ロジック』を思い出す。どちらも想像外の視点から人の生態を見ていくのだが、その意志の棲み処が20代男性の生殖器というのが今作のカギだ。もし彼がプレイボーイか強姦犯ならポルノか犯罪物になるが、夢も希望も性欲も皆無な草食系では活躍しようがない。しかし欲望や激情とは無縁な彼は逆に周囲から信頼され、相談を受けたり愚痴の聞き手となって意外な秘密を知ることで己の幸福とは何か考えるようになる。現代の若者こそ人ならざるものに変わってしまうのではとの恐怖すら感じる。2024/12/11
bunmei
279
『生殖記』という意味深なタイトルの朝井リョウの新刊。『生殖』とは、本来生物学的にも種の保存という観点からの本能的な行為でもある。しかし現代社会において、マイノリティーや多様性、同性愛が必然的に叫ばれている中で、実際には、世界的な人口減少に歯止めが掛からず問題ともなっている。そんな生物学的観点に視点を当てながら、同性愛者の一人の男(個体)の生殖本能を主体として綴られていく。そして、『共同体』という社会や組織、会社における、そうした人々の立ち位置に伴う苦悩や不平不満へのジレンマを、客観的な視野で分析している。2024/10/16
hirokun
236
★5 朝井リョウさんの今回の作品には非常に刺激を受けた。ストーリーの語り手を生殖器の性欲本能に設定し、生物学的視点から現在の世の中のデフォルト、常識に対し、デフォルト外の立場から興味深い示唆を与えてくれる。私はSF風の作品や少し飛んでる未来小説的なものには馴染めない方だが、この作品は設定からくる違和感もほとんどなく、凝り固まった私の思考スタイル、価値観に刺激を与えてくれた。文中にある「幸福度の基準が異なると生きる世界が変わる」も貴重な指摘だ。2024/11/07
ゲンタ
217
昨日夕方、駅書店で購入、深夜に読了しました。先程、隣の実家母に貸しました。週末に2回目を読んだらリア友たちに順に貸し出し語り合います。「ヒト」って?!凸う~~む 2024/10/01