内容説明
一九二〇年代、合衆国屈指の大都市ブローケナーク。
禁酒法がすっかり定着した元酒場で働く少年サンガは、貧乏ながらも身の丈に合った穏やかな生活を送っていた。
ただ一人、大切な妹がいれば生きていける――
そのはず、だったのに。
「よう、うな垂れてるその兄ちゃん。何か辛い事あったんか?」
失意の中、サンガの前に現れたのは真紅と名乗るマフィアの男だった。
目的を果たすため「白蛇堂」の一員となったサンガは、真紅の下で彼の仕事を手伝うことになるのだが、いつしか都市の裏に深く根を張る闇に誘われていき――。
あの「シャンティ」から生まれた衝撃のダーティファンタジー!!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
34
1920年代、合衆国屈指の大都市ブローケナーク。大切な妹を失い自暴自棄となった少年サンガが、真紅と名乗るマフィアの男と出会うダーティーファンタジー。禁酒法が定着し違法薬シャンティが流通する街で、貧乏ながらも身の丈に合った日々を送っていたサンガを襲った悲劇。妹の復讐に燃えるサンガをなだめて、マフィア白蛇堂の一員とした真紅。そんな日々に馴染んでいくことや、お前には殺せないと評され葛藤するサンガの結末はむしろあっけなかったですけど、彼と共に過ごし淡々として一見掴みどころのない真紅の垣間見える心情が印象的でした。2024/06/16
きたさん
16
楽曲の持つ妖しさをしっかりと残し、それ以上の容赦無さをさらっと取り入れた世界観が最高に好き!帯には「ダークファンタジー」とあったけれど、禁酒法時代の(おそらく)アメリカを舞台にしていることもあり、ゴリゴリにノワール感を味わえるヤバい作品でした。ラノベレーベルには割と珍しい、参考文献の濃さが作品の完成度を裏付けしているようにも思います。2024/06/29
真白優樹
12
禁酒法が根付いた合衆国の、悪徳と罪が支配する大都市で、妹を亡くした青年が胡散臭いマフィアの男に出会い、始まる物語。―――平和というのはそこにない、あるのは己の心の中に。 マフィアという裏の世界だからこそ、命がこれでもかと軽いダーティの中、ふと見えるそれぞれの感情がどこか鈍く輝く物語であり、煤けて昏い面白さがある物語である。一つ死んでまた一つ。何も変わらぬように見え、それでもどこか心が軋んで。何も変わらぬように見え、何かが変わるかもしれぬ退屈な平和の日々の行方とは。 次巻も勿論楽しみである。2024/06/18
シノミヤユウ
12
面白い!犯罪組織がせめぎ合う無秩序の都市。純粋さも持つ少年が胡散臭いお兄さんに翻弄されつつ、街の仄暗い摂理に呑み込まれていく不安感がクセになる。人の死にもドライな世界だからこそ、主人公の執念や葛藤、本心の読めない裏社会の人間たちがふと滲ませる感情がスパイスのように効いていて、淡々としたダーティな世界観と痺れるような心理描写にぐいぐい引き込まれました。表向きは平穏(シャンティ)を保つ街で、個人の平和が刺激的に揺らぐ鮮烈な人間劇です。2024/06/18
Mayuko Kamiwada
7
元酒場で働くサンガ。貧乏だけど大切な妹のために慎ましく生活していた。けれど、あることがきっかけで妹を失う。失意のどん底に突き落とされたサンガの前に現れたのは真紅と名乗るマフィアの男だった。真紅の元で働くことになったサンガに待ち受けるものは・・・。「シャンティ」という楽曲から生まれた小説。不器用ながらも、なんとかマフィアでの生活に慣れようとするサンガ。真紅との共同生活の中で自分の居場所を見つける中で、妹への復讐を果たしたいという想いから細い糸を綱渡りしているようでヒヤヒヤした。2024/09/09