ちくま新書<br> 町内会 ――コミュニティからみる日本近代

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ちくま新書
町内会 ――コミュニティからみる日本近代

  • 著者名:玉野和志【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2024/06発売)
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  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076298

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内容説明

加入率低下や担い手の高齢化により、存続の危機に瀕する町内会。回覧板、清掃、祭り、防災活動など、活動は多岐にわたる。そもそも参加は任意であるはずなのに全戸加入が原則とされてきた、このふしぎな住民組織はいつどのようにして生まれたのか。それは共助の伝統か、それとも行政権力の統治技術か。明治地方自治制、大衆民主化の時代から戦中・戦後まで、コミュニティの歴史を繙くことで、この国の成り立ちがみえてくる。問題の本質をとらえ、再生の手がかりを探るための必読書。

目次

はじめに/第一章 危機にある町内会/町内会が消える?/首都圏近郊の状況/超多忙な町内会長/「自分の代で終わりにします」/「やめるならごみ集積所を使うな」/震災以降の過剰な期待/「きずな」と「共助」/町内会を知らない若者たち/本書での表記──町内会、町会、自治会、部落会/町内会の定義──共同防衛を目的とした全戸加入原則/町内会と労働組合、国家と地方自治体/本書のねらい/第二章 町内会のふしぎな性質/町内会とは何か/町内会の特異性/町内会の理論的説明を求めて/中田実の地域共同管理論/安田三郎の町内会=地方自治体説/鳥越皓之の本質起源論/部落会と町内会/共同防衛という本質的機能への着目/国家、地方自治体、町内会に共通する機能/町内会成立の典型/フーコーの統治性研究/「統治性」/「階級性」/統治性との関連で/階級性との関連で/第三章 文化的特質か、統治の技術か/町内会=文化の型論/スープと味噌汁の違い/日本人の自治感覚/日本的統治の特質/原型としての明治地方自治制/大区小区制と地租改正反対一揆/村落の社会構造/士族民権から豪農民権へ/地方三新法と国会開設の詔/松方デフレと豪農層の上昇転化/明治の合併と行政村の形成/制限選挙制のからくり/区長と区長代理/芸術品としての明治地方自治制/寄生地主制と共同体的秩序の利用/日本的統治の本質/第四章 近代の大衆民主化──労働者と労働組合、都市自営業者と町内会/明治地方自治制から町内会体制へ/明治地方自治制の動揺/寄生地主制と共同体的秩序の変質/男子普通選挙と治安維持法/労働運動の台頭と弾圧/日本の労働者の選択──経営家族主義から日本的経営へという道/もうひとつの選択──一国一城の主=都市自営業者への道/町内会の起源について/町内会の成立過程/近代の都市化と町内会/共同防衛組織としての町内会/戦時体制と町内会の整備/臣民として認められた都市自営業者/大衆民主化の時代/労働者と都市自営業者/労働組合と町内会/戦時下の町内会/戦後改革と町内会禁止令/サンフランシスコ講和条約と町内会の復活/町会連合会の結成と町内会の圧力団体化/住民運動と革新自治体/コミュニティ施策の展開/町内会体制の確立と動揺/第五章 町内会と市民団体──新しい共助のかたち/グローバル化と都市自営業者層の衰退/町内会体制がもっていた可能性/町内会と日本の政治構造/政治改革と自公連立/町内会への期待/例外としての町内会/避けられない町内会の弱体化/市民活動の台頭/水と油の町内会と市民団体/期待される雪解け/行政の思惑/統治性と階級性の矛盾/何を捨て、何を継承すべきか/協議、決定、要求する場としての町内会/市民活動団体の役割/代議制民主主義との関係/おわりに/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うえぽん

52
年々加入率が低下し、担い手不足に悩む町内会を、明治地方自治制以降の統治技術と民衆運動との微妙なバランスの下で維持されてきた財産だと一定の評価をしつつ、今後は協議・要求機能に特化すべきと論じた書。明治期に国政選挙権は寄生地主層に限りつつ、豪農層に旧自然村の区長や区長代理として活躍の場が与えられたとの見方は新鮮ではあるが、戦後の基盤を都市自営業者層のみに限定して論ずるなど、全般的に階級社会的語彙で説明している点に限界があるとの印象。町内会は協議機能に特化して事業はNPO等にとの処方箋も、実現性に疑問符が付く。2024/08/14

壱萬参仟縁

47
行政は何でも町内会に頼るのではなく、さまざまなつながりをいろいろな局面でとらえてつないでいく(023頁)。この考えは正しい。全戸加入原則(026頁)。昭和時代の産物か? 町内会は、国家や自治体とは異なり、任意団体(051頁)。強制できないので、私は辞めたいといったのに、年会費を納めろ、と請求が来た。まったくおかしな話。2025/07/18

山口透析鉄

24
市の図書館本で。こういう方が著者の本領が出ています。 統治機能と階級機能を前提に、明治以降の歴史も絡めつつ、日本の町内会の成立した事情が分かりやすく述べられています。 やはり労働組合の組織、欧米と日本のそれは違って、家族型経営というのもありましたし、弾圧されて今に至っている弱点はあるだろうと思います。 自由民権運動を支えた層を一定、取り込み、大正デモクラシーに絡んでも都市などの自営業者などを組織化して臣民化した、というのも良く分かりました。 政治・行政の下請けっぽいところもあったが、もう今はそういうのは↓2024/09/25

koji

22
6年前に亡くなった父は転勤族で、60歳で福岡に家を建て28年間、どちらかと言えば新参者なのに、町内会活動に一生懸命取組んだことを葬儀で多くの人から聞きました。定年後の「この生き方」は理想としてずっと私の胸に刻み込まれています。ただ世の中は難しいもの。人から敬われるのに、誰も町内会のなり手がおらず衰退しています。この矛盾、私の問題意識をとく手掛かりとして本書を手に取りました。町内会が今に至る歴史を深く掘り下げ、コミュニティを哲学的に考察する「難しい」社会学書でしたが、この書から学んだことをコメントに書きます2024/09/18

ぷほは

14
情報量が圧縮されており、名著。「統治性」と「階級性」という2観点から明治~現在までのコミュニティ体制を町内会という事象の変遷から読み解いていく。特に豪農層から篤農層への変化や都市自営業者の翼賛体制への取り込みなどの議論展開がスリリングで瞠目した。かつての岩波新書『町内会』では他アジア国の自治組織との比較があったのに対し、欧米との比較に単純化されているきらいがあるものの、その分「圧縮された近代」として日本社会の姿をビビッドに切り出すことに成功しており、理念型としてその概要を示すという目論見が達成されている。2024/08/16

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