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内容説明
明治から昭和にかけて活躍した小説家・野上弥生子。
語学力や教養やケア実践を、彼女はその先駆的な仕事にどう活かしたのか。
「ケア」をテーマに研究を続けてきた英文学者の「私」が弥生子の人生に惹かれた理由とは。
文学、映画、アニメ、音楽……現代の表現者たちの言葉をつなげて語る斬新な評論。
ロングセラー『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』著者の最新作。
【目次】
1章 言葉の森を育てた女たち――松田青子と野上弥生子
2章『エブエブ』と文学のエンパワメント――辻村深月と野上弥生子
3章 魔女たちのエンパワメント――『テンペスト』から『水星の魔女』まで
4章 ザ・グレート・ウォー――女たちの語りに耳をすます
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R子
18
群像掲載の論考をまとめたもの。野上弥生子の生涯や作品を中心に、ケアの倫理という文脈からフェミニズムを考えている。ブックガイドとしても楽しめる(『英子の森』『年年歳歳』気になる)1冊だ。女性の自立を“悪魔”と呼ぶ等のバックラッシュの歴史を知ると、これが過去のことではなく、変化しながら今も続いている闘いなのだと感じた。また、リーン・イン・フェミニズムに対し、自己責任感を強めるのではないかという危惧に目を開かされた。2024/12/26
rinakko
13
頗る面白かった。野上弥生子、ヴァージニア・ウルフ、オースティン、シルヴィア・プラス、『エブエブ』『年年歳歳』『水星の魔女』などなどなど…翔べなかった女たち(エヴリンは翔んだけど!)がここに会し、縦横無尽に繋がり合う。思いがけず、でも説得力がある。とりわけ3章「魔女たちのエンパワメント」では『白鶴亮翅』『マクベス』にも話が及び、魔女というテーマにも魅かれてとてもよかった。魔女が排除されてきたこと(家父長制社会が「悪魔」とみなすのは、女性の自立を目指す思想と生き方)、まだ続いていること。その為のエンパワメント2024/07/23
呼戯人
11
小川公代のケアやエンパワメントに関する本の三冊目。本編では、野上弥生子を主人公に家父長制的女性差別と闘い続ける女性作家の作品が取り上げられる。もちろん、取り上げられる作品は文学だけに限らず、ガンダム「水星の魔女」や外国の文学作品、ヴァージニア・ウルフやシルビア・プラス、らがどのように家父長制と闘いその文学を紡いでいったかが論じられる。たとえ男性であっても、勇気づけられる作品になっている。2024/11/06
フクロウ
4
アルファ・ヒロイン/ベータ・ヒロインの分節と、後者にケアを配置する見取り図はわかりやすい。もっとも、最近、なんでもかんでも「ケアの倫理」に回収されているような雰囲気がある。たとえば「ケア」は「声なき声を聴く」と「配慮する」くらいの意味合いであり、であればそれらの用語を使えばいいのではないか。また、「ネガティブ・ケイパビリティ」にしても「エポケー」とか「熟議」とか従来の語で十分カバーできるのではないか?『水星の魔女』をフェデリーチで読み解くアイデアは私も頭の中にあったため興味深かったが、相違点もある。2024/06/21
きょん
0
野上弥生子という作家を初めて知り、読んでみたいと思った。心の中では抵抗を感じていても声を上げられない、そんな女性もエンパワメントしてくれる本だった。2024/12/17