内容説明
ノーベル賞詩人オクタビオ・パス(1914-98)がパリに暮らした一九四〇年代後半に創作した散文詩と,イメージとリズムの法則に支配された,夢のような味わいをもつ短篇.シュルレアリスムの正統的・批判的継承者として知られる巨匠による,研ぎ澄まされた詩的直観が鮮烈な印象を残す初期の代表作.一九五一年刊.
目次
僕は始める
詩人の仕事
詩人の仕事
動く砂
青い花束
眠る前に
波との生活
正体不明の二人への手紙
驚異の意志
書記の幻想
難業
急ぐ
出会い
天使の首
鷲か太陽か?
子供のいる庭
夜の散策
エララバン
出発
平原
呪詛
大文字
黒曜石の蝶
無花果の樹
向こう見ずな音符
上流社会
空中の城
古い詩
ある詩人
幻
ウアステカ族の貴婦人
自然な存在
メキシコ渓谷
羊歯の褥
包囲された男
未来の讃歌
詩に向かって(様々な起点)
解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蘭奢待
41
オクタビオ・パスはメキシコの詩人、作家。ノーベル文学賞を受賞している。美しく磨き抜かれた言葉による散文詩。文章は全くメキシコ的でなく、スペイン的でもなく、フランス的だが、後書によると外交官として赴任していたらしい。そこでブルトンらシュルレアリストと親交を結ぶ。原書で読むべくもないが、岩波文庫から出たこの自然な日本語の文章表現や、暗喩に富んだ言葉の選び方はかなり優れた訳者の功績が大だと思われる。2024/03/30
新田新一
19
ノーベル文学賞を受賞したメキシコの詩人、オクタビオ・パスの散文詩集。鮮烈なイメージを散りばめた内容で、読み手の心に強烈な印象を残します。難解なもの多くて、深く考えだしたら、意味が分からなくなってくることが多いのですが、意味よりも言葉のイメージやリズムに焦点を当てて読めば、夢の世界にしばらくの間浸りきることができます。「波との生活」が一番の好みです。本当に波と暮らす青年が出てきます。変化し続ける波は、彼を翻弄します。あっと驚く結末が心に残りました。2024/02/01
ふみふみ
13
波を擬人化して恋人に仕立てたアイデアとプロットが秀逸な名作「波との生活」を含む短編10 篇と散文詩集。短編は波の他に「天使の首」「驚異の意志」「青い花束」などきちんとプロットがある作品が好みです。一方、散文詩は私にはなにがなんだかです。意味が不明なら、イメージを感じ取れなんですが、イメージもできないですね。他の著書で読んだ定型詩はまだ読めた記憶がありますが、言葉の羅列も少なく余白が多い方が、想像力で補えるってことなのかな。 2024/02/17
ふるい
12
散文詩と短篇が収録されている。しかしパス自身はそれらを区別して捉えてはいなかったという。タイトルになっている"鷲か太陽か?"は、メキシコでコイン投げを行う際に使われるフレーズであるそうだ。詩は偶然の産物であり、かつ日常的な実践でもあるという著者の姿勢が表れている。「波との生活」は他のアンソロジーで既読だったがやはり良い。絵画の世界に入り込んでしまう「天使の首」も好みだ。コルタサルが短編に分類されるような作品をパスがあまり書かなかったことを残念がったというのもわかる気がします。2024/02/10
きくらげ
6
タブッキみたいなドライさと甘さが同居する幻想的な詩かと思ってたけど蓋を開けてみれば、語が強く立つ、イメージとリズムのぶつかり合う世界だった。読んだことないけどマラルメ的なのか。ならそれこそバルトが「詩のエクリチュール」として、サルトルを踏まえながら書く「垂直な投企」では。語の絶対性による関係の切断、休止は語を言語の自生地に向かわせる。私は振動の間の休止的なことはパスも書いたと思うが、ここで重なるのか。詩作の上で引き継ぐ言語、そのうちに見つかる他者や歴史に向き合った結果エクリチュールとして選び取られた、と。2024/10/05
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