SMの思想史 - 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望

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SMの思想史 - 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望

  • 著者名:河原梓水
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  • 青弓社(2024/05発売)
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  • ISBN:9784787210586

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内容説明

サディズム、マゾヒズム、フェティシズム、同性愛や異性装などのセクシュアリティをもつ人々が集った雑誌「奇譚クラブ」は、「その表紙に触れるだけでも戦慄が走る一種危険な雑誌」「戦後の裏文化の帝王」などと語られ名前だけは広く知られてきたが、雑誌の特色や内容に関する本格的な研究がなされてこなかった。

本書では、「奇譚クラブ」を含めた1950年代の戦後風俗雑誌7誌を全号通覧のうえ、類似雑誌の系譜・模倣関係を検証、「奇譚クラブ」の史料的特質とその重要性を浮き彫りにする。

吾妻新、沼正三、土路草一、古川裕子という4人の「奇譚クラブ」作家/思想家に着目する。戦後民主主義・近代化の潮流のなかで、サディスト・マゾヒストを自認した人々は、支配と暴力をめぐる欲望について何を考え、どう語ったのか。「家畜人ヤプー」「夜光島」などのポルノ小説やエロティックな告白手記から、主体性、自立、同意、愛をめぐる論点を取り出し、近代的な人間性をめぐる規範の限界をあぶり出す。

目次

はじめに

第1部 史料論――戦後風俗雑誌研究序論

序 章 問題の所在と本書の視角
 1 問題の所在
 2 研究方法
 3 時期区分

第1章 第一世代雑誌――「奇譚クラブ」「人間探究」「あまとりあ」
 1 「人間探究」「あまとりあ」
 2 「奇譚クラブ」
 3 戦後風俗雑誌の共通点
 4 「科学的」研究と当事者研究

第2章 第二世代雑誌と弾圧――「風俗草紙」以後
 1 「風俗草紙」とその模倣誌たち
 2 「風俗科学」
 3 専門誌の価値
 4 雑誌同士、執筆者同士の関係
 5 弾圧と廃刊
 6 弾圧以後――「裏窓」の創刊

第2部 善良な市民になる

第3章 病から遊戯へ――サディズムの近代化・脱病理化
 1 サディズム・マゾヒズム概念の輸入と定着
 2 フェミニストなサディスト
 3 吾妻新によるサディズムの近代化論

第4章 〈告白〉という営み――セクシュアリティの生活記録運動
 1 〈告白〉に対する二つの態度
 2 〈告白〉とフィクションと真実
 3 〈告白〉が描こうとしたもの
 4 近代的主体になる

第5章 吾妻新と沼正三のズボン・スラックス論争
 1 論争の経緯
 2 ズボンの意義――村上信彦の女性論・服装論から
 3 裏返しの拘束衣――ズボンの性的活用

補論1 作家の実名(1)吾妻新(村上信彦)――戦後の民主的平等論者の分身
 1 テキスト比較
 2 村上信彦にとっての吾妻新と「奇譚クラブ」

第3部 社会に抗する思想

第6章 マゾヒズムと戦後のナショナリズム――沼正三「家畜人ヤプー」
 1 男性主義的エリート・沼正三
 2 マゾヒズムと女性蔑視
 3 理想郷

補論2 作家の実名(2)沼正三(倉田卓次)――『家畜人ヤプー』騒動解読
 1 問題の所在
 2 個人情報の比較
 3 『家畜人ヤプー』騒動と共同筆名説
 4 『家畜人ヤプー』騒動はなぜ起きたか

第7章 家畜の生と人間の身体――土路草一「潰滅の前夜」「魔教圏No.8」
 1 「家畜化小説」の登場
 2 最初の家畜、最後の家畜
 3 小説の構造
 4 家畜への道程
 5 唯一の生

第8章 近代性を否定する――古川裕子「囚衣」とマゾヒストの愛
 1 吾妻新と古川裕子
 2 「夜光島」という思考実験
 3 ユートピアの成立
 4 マゾヒストの愛
 5 近代性の要求と免罪

おわりに

初出一覧

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tyfk

3
沼正三「家畜人ヤプー」は読んだけど(日本の)SMの歴史をあまり知らないので「奇譚クラブ」あたりを導入に。1950年代、発禁処分などもあるが、読者投稿や交流の手段として雑誌メディアの役割がおおきい。吾妻新(=村上信彦)は知らなかったが、この人の唱えた「近代化されたサディズム」とか時代背景的に興味深い。と同時に8章の古川裕子の「マゾヒストにだって愛することはできる」という反論も。2025/03/12

xxx

1
奇譚クラブから日本のSMの思想史を読み解く。欧米では性科学からサディズムは「本質的に異常な傾向」として猟奇犯罪と結びつけられたが、日本では1950年代から吾妻新を中心にサディズムの脱病理化と「同意あるSM行為(者)」の主体形成が進んだ。 また「家畜人ヤプー」の考察から「男性権威を移譲」された女性による支配が、ホモソーシャル的であり、「権威へのフェチズム」であるという指摘は興味深い(ここでは女性は男性的権威の媒介者でしかない)。「家畜人ヤプー」が敗戦の日本人的トラウマを反映しているのは納得できる。2025/06/14

takao

1
ふむ2024/09/13

たろーたん

0
『家畜人ヤプー』の章が面白かった。マゾヒズム小説として紹介し、次はナショナリズム小説として紹介する。そもそも、マゾヒストには二ついる。鞭を打たれて痛みに興奮するものと、そこに精神的凌辱と屈服を加えるもの。前者は崇高な精神または殉教であり、後者はそれだけでは満足しない訳だ。そして、沼正三は後者である。女性という媒介を通して行われるマゾヒズム行為、沼は終戦後の捕虜時代に女性に鞭打たれ、排泄物を食べさせられることによって「自分の主体がゼロになってしまった恍惚」を味わったらしい。(続)2024/10/13

みんな本や雑誌が大好き!?

0
本書の圧巻はやはり沼正三氏(こと倉田卓次)の『家畜人ヤプー』の解析です。 私がこの沼さんの本の存在を知ったのは、森下小太郎氏の論文『「家畜人ヤプー」の覆面作家は東京高裁・倉田卓次判事--三島由紀夫が舌端した戦後の一大奇書』)「諸君!」1982年11月号)を拝見した時だったと記憶しています。もう40年も前のこと。『家畜人ヤプー』も角川文庫で読んだ記憶があります。今は幻冬舎アウトロー文庫に入っているようです。是非、一度手にしてお読みください。電車の中で読む時は、カバーをつけてお読みください。2024/10/15

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