内容説明
1740年9月18日、軍艦5隻を中心とした小艦隊がポーツマスを出港した。そこには、かつての商船から大砲28門を備えた六等艦へと生まれ変わった「ウェイジャー号」と250人の乗組員の姿もあった。スペインのガレオン船を追うという密命を帯び、意気揚々と出発した艦隊だったが、航海は凄絶を極め、謎の伝染病で多くが死に至り、南米大陸南端を航行中ついに嵐に飲み込まれてしまう。隊からはぐれ、無人島へと流れ着いたウェイジャー号の乗組員たち。そこで繰り広げられたのは、悲惨な飢えとの戦いだった。武器や食料を奪い合い、殺人や人肉食にまで及ぶ者が現れ、それでも極限状態を生き延びた者たちは、やがて対立する二組に分かれて島を脱出する。骨と皮になり果てながら母国へと帰還した33人を待ち受けていたのは、非情なる裁判だった。絶海の孤島に隠された真実とは? 彼らが犯した真の罪とは?全米で300万部を突破した『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』著者が、生存者の日誌や証言をもとに、ウェイジャー号の運命を克明に描き出す。アメリカ、イギリス、フランスでベストセラーになったサバイバルノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
132
スペイン財宝船狩りに出港した250人乗りの英海軍艦船ウェイジャー号は、7か月後チリ南部の無人島で難破するまでに100人以上を壊血病と嵐の海で失い、残る者も人肉食に走るほどの飢えと寒さで次々と死んでいった。海のロマンや栄光とは無縁の、世界の尻の穴で絶望と死神に魅入られた男たちの凄絶な悲劇は読んでいて苦しくなる。生還者は33人だけだが、事件の原因を追及されると都合の悪い政府は曖昧な処分でごまかす。イギリス植民地帝国が膨大な人命を使い捨てることで建設された過程で犠牲となった、無数の船乗りたちへの紙碑といえよう。2024/07/12
Sam
60
まるでフィクションのような面白さ。漂流から生還に至るまでの様々な人間ドラマが本書の白眉で、母国イギリスに帰還してからの軍法会議の行く末にも興味を唆られた(尤もその結果は少々肩透かしであったが)。評判通りのよくできたノンフィクションだと思うが、漂流を描いた作品という意味では漂流生活の迫真の描写、漂流者たちの卓越したチームワークと人間性に心を揺さぶられた「エンデュアランス号漂流」に軍配をあげたい。また、漂流の迫真の描写という意味では(フィクションではあるものの)吉村昭「漂流」という素晴らしい作品もあったな。2024/07/07
ヘラジカ
50
期待に違わぬ傑作ノンフィクションである。助走はやや長いがウェイジャー号の苦難が始まってからは正に「巻を措く能わず」の一気読み。過酷な環境や不完全な組織が生み出すこの世の地獄が鮮烈に記されており、それぞれの視点や立場がとても他人事とは思えないほどの迫真的な筆致であった。表層を剥ぎ取られた剥き出しの人間性は、何百年と経って文明が成熟しても決して変わるものではないと思わせる。何度も自分の身を置き換え、想像してゾッとするような恐怖を味わった。最後の一章、エピローグに至るまで大満足の読書。2024/04/24
星落秋風五丈原
38
1740年9月18日、軍艦5隻を中心とした小艦隊がポーツマスを出港した。そこには、かつての商船から大砲28門を備えた六等艦へと生まれ変わった「ウェイジャー号」と250人の乗組員の姿もあった。財宝を積んだスペイン船を追う密命を帯び、意気揚々と出発した艦隊だったが、航海は凄絶を極め、謎の伝染病で多くが死に至り、南米大陸南端を航行中ついに嵐に飲み込まれてしまう。殺人や人肉食に及ぶ者が現れ、極限状態を生き延びた者たちはやがて対立する二組に分かれて島を脱出とあるが、裁判の場面は全体のボリュームから見ると少ない。2024/08/01
まぶぜたろう
21
話を聞いたときは鉄板おもしろ案件かと思ったのだが、意外とつまらない。ナンパするまでが長いし、してからもあっさり。割と皆さん紳士的だし、サバイバル描写も薄い。何より、説明しかなく描写がないのが辛い。その後の展開も、海戦シーンが長々と入ったり、裁判がすぐ終わったり、ネタ自体は面白いから退屈はしないが、どうも期待はずれ。■この作家の訳書をなぜか全部読んでるが、ネタはいいのに、どれも淡白というか、ハッタリ感がない。ノンフィクションとしては誠実なんだろうが、俺はオモロいのが読みたいだけやねん。(◯◯◯●●)2024/06/28