内容説明
スミスが共感を基準とする道徳理論を示したという従来の説に対し、本書はスミスが慣習的判断、共感的判断、一般的規則に基づく判断、功利的判断という異なる道徳判断を認識し、道徳判断の多様性を認めた道徳論を提示しようとしたことを解明する。『道徳感情論』の新解釈を示し、スミス研究に一石を投じる挑戦的書。
目次
はじめに
序 論
第一章 『道徳感情論』におけるスミスの経験的分析
はじめに
1 『道徳感情論』第七部におけるスミスの批判的観点
2 「天文学史」におけるスミスの理論理解
3 ハチスンの美的感覚とスミスによるハチスン批判
第二章 『道徳感情論』の基本的原理
はじめに
1 共感と道徳判断
2 功績と罪過
3 自己に対する道徳判断
4 自己に対する道徳判断と自己欺瞞
補論 自己欺瞞をめぐる問題について――スミスとバトラーとの比較分析
はじめに
1 スミスとバトラーとの関係について
2 スミスにおける自己欺瞞
3 バトラーにおける自己欺瞞
第三章 行為の効用(有用性)と快楽・苦痛とが道徳判断に及ぼす影響について
はじめに
1 効用(有用性)の知覚と道徳判断
2 行為が直接的にもたらす快楽・苦痛と道徳判断
第四章 慣習と道徳判断
はじめに
1 美的判断に対する慣習の影響について
2 道徳判断に対する慣習の影響について
3 慣習に基づく判断と共感に基づく判断
4 反省としての共感に基づく判断
第五章 道徳判断の諸原理と共感的判断
はじめに
1 諸判断の整理
2 自然的判断としての共感的判断
3 スミスによる経験的分析と共感的判断
結 論
あとがき
参考文献
索 引