内容説明
一般に約60年続いたといわれる南北朝内乱だが、西国と東国の境界である信濃国は終息までさらに20年を費やした。自らの権益を主張するため幕府や領主へ武力行使し、地域社会のなかでも軋轢を生じさせた悪党たちが全国各地に展開した時代。しかし、信濃国では様相をやや異にしていた。当地の地域集団の行動に光をあて、内乱長期化の要因に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サケ太
20
「逃げ上手の若君」の副読本として、かなり良いのでは、という一冊。信濃国がどのように形成され、どのような人々が運営していったのか。その立ち位置について語られるのは面白い。幕府の支配を受け入れて、在地の秩序を守りつつも、自分達の意見や立場の表明は行っていく。「悪党」に成らなかった信濃国の人々。時代によって変化を強いられていくのだろうが、この時代の強かさを感じられて面白かった。2021/11/23
MUNEKAZ
15
南北朝期における信濃の国人領主の動きを見た一冊。山脈で分断され一国全体に影響を及ぼす勢力が生まれなかった点や、北条氏の領国であったため京方に敵対する国人が多かったことなど、地域の特徴をよく説明している。この時期らしいグチャグチャな争いが続くが、クライマックスの大塔合戦で描かれているように、京下りの守護大名には抗しつつも、幕府の支配自体は否定しないあたりに、内乱の中で上位権力の重要性を認識する様子が見て取れる。また信濃が鎌倉府と幕府の管轄の境目であったことも、領主間の争いが長引く要因になったと再確認した。2022/04/23
nagoyan
13
優。諏訪氏、村上氏のような信濃の在地勢力は、ときに北条氏に、ときに南朝に、ときに直義に、あるいは幕府に与して叛服常ならず。しかし、それは在地の論理優先という点で一貫している。中央の政治情勢の記述と比較して、信州の豪族たちに十分紙幅を費やすことができていない点は稍々残念だ。ただ、大塔合戦を述べる口調にやや熱を感じる。守護を追放した大塔合戦だが、あくまで幕府支配は受け入れる姿勢を示す。在地の論理は通すが、在地の秩序は守る。「悪党」化しなかった理由か。2021/11/04
フランソワーズ
11
中世(大塔合戦後まで)の信濃の国情を知ることができる歴史一般書。京と東国の狭間に位置する、そして高い山脈に隔てられているゆえに、一国を支配できる有力な勢力が生まれなかった信濃。領主たちは時々の時勢に翻弄され続けたが、一方でより地域社会との結びつきを強化する指向性を育んだと言える(それは戦国時代にまで引き継がれる)。中でも興味深かったのが、悪党の存在がほとんど確認されないこと。それらしい氏族もいたが、結局彼らにしても「地域社会と連帯すること」で、その汚名を回避したと。→2023/03/26
穀雨
4
タイトルからして一見マニアックだが、信濃国の地勢から説き起こして、南北朝時代に至る歴史を通観する「長野県の歴史 上巻」といった内容だった。信濃の情勢とあわせて、当時の室町幕府や鎌倉府といった中央の事情もしっかり解説されているため、比較的読みやすかった。一方で、タイトル通りの内容を期待するコアな層には物足りなく感じられるかもしれない。2022/10/27
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