内容説明
【古代ローマから太平洋戦争、湾岸戦争まで、戦争にはどんなコストが発生し、やりくりしたのか。戦争の準備と結末を数字から読み解く。エピソード満載の戦争経済学】
家康が恐れた豊臣家の財力、戦艦三笠の値段はいずも型護衛艦37隻分相当、戦時課税の起源は古代メソポタミア、軍が銀行になったテンプル騎士団、ドイツが第一次世界大戦の賠償金を支払い終わったのは2010年――。戦争と経済の関係を理解すれば歴史がもっと面白くなる。様々なエピソードをベースに、古代ローマ、戦国時代から太平洋戦争、ウクライナ侵攻までの古今東西の戦争を経済面から読み解く。
目次
第1章 信長は合戦を金で買った――戦争のミクロ経済学
第2章 欲しがりません勝つまでは――戦争のマクロ経済学
第3章 離れですき焼き――戦争の財政学
第4章 戦時の錬金術――戦争の金融論
第5章 金庫から打ち出の小槌まで――戦争の銀行論
第6章 さんまを味わう傍らで――戦争の産業論
第7章 秀吉が授けた知恵――戦争の通商・貿易論
第8章 傭兵は消え去らず――戦争の公共経済学
第9章 彼らはすでにワシントンにいた――戦争の経済思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
人類の歴史は戦争の歴史だが、戦争の歴史は経済の歴史でもある。地域や国を問わず多くの戦争は経済的利益を目的に起き、戦うための軍隊を設立し維持するのに莫大な予算を費やし、戦費を賄うため財政金融は無理に無理を重ねるのを繰り返した。戦争は人殺しの技術のみならず、それを支える錬金術や傭兵システムも発展させた。戦史に登場する英雄も兵器も大作戦も、カネがなくては存在できない現実を嫌というほど列挙していく。金持ち喧嘩せずではなく金持ちしか戦争できない今日、戦争を決断する政治と有権者の責任も大きいと自覚せねばならないのだ。2024/05/11
trazom
112
学術的な書物かと思いきや、豈図らんや、著者の軽妙な語り口と、古今東西の幅広い戦争事例を駆使した分りやすい解説の、とても面白い読み物。戦費の内訳、金融、財政、賠償金、兵站、産業など、戦争とお金の関係がよくわかる。第二次世界大戦の戦費/GDP比率が、英米も日独も、ともに40-50%で同じというのは意外な印象。最も興味深かったのが兵士・傭兵の話。奈良時代の防人の食料や武器は自前、応仁の乱の足軽は無給で掠奪が報酬だったという。洋の東西を問わず、戦争には傭兵(=人類最古の職業?)が不可欠だったという歴史を知る。2024/04/21
よっち
38
古代ローマから太平洋戦争、湾岸戦争まで、戦争にはどんなコストが発生し、やりくりしたのか。戦争の準備と結末を数字から読み解く1冊。戦費がどのようなことに使われているのか、戦費の特別会計化や戦時増税、戦時国債や借金の後始末、賠償金の返済、経済封鎖と武器貿易、傭兵や民間軍事警備会社の登場といった戦争のポイントを、家康が恐れた豊臣家の財力、戦艦三笠の値段はいずも型護衛艦37隻分相当、戦時課税の起源は古代メソポタミア、ドイツが第一次世界大戦の賠償金を支払い終了は2010年など、興味深いエピソードと一緒に読めました。2024/04/09
zoe
20
2024年。防衛研究所所属。争いごとを解決するため、戦争は昔から行われた。そうすると、お金がかかる。昔は、攻めた落とした場所から略奪が行われた。最近では市民と兵士が分離し、略奪行為などは行われない時代となった。(はずだが、最近盗賊の如く美術品を略奪した証拠のニュースを見た気がする)お金が必要となると、貴金属の含量の低い硬貨を作ったり、偽札を作ったりということが行われる。戦争に負けると賠償を払う。戦争をやめるにも、お金がからんだ交渉ゴトとなる。民間軍事警備会社の登場。お金で請け負うが、情報の非対称性もある。2024/06/08
oshow
4
戦争と「経済」の関係を様々なトピックで語った本。マクロな統計、財政、金融、銀行に貿易、福祉、賠償金にまつわる話や傭兵制度とバラエティ豊か。/十字軍遠征の時に巡礼者を守るために生まれたテンプル騎士団は、銀行のような役割も果たしていた。戦費をそこから借りる王族や諸侯も多かったが、テンプル騎士団からの借金がかさんだフランスは団の壊滅を目論み、実行する。異端審問にかけて冤罪で処刑。なんて話だ…。/福祉制度の充実のためにむしろ戦争を利用するという思想が存在する。福祉国家=戦争国家2024/12/07