内容説明
海に囲まれたアメリカにとって、アジアは決して海の向こうの辺境ではなかった。建国直後、アメリカはなぜ太平洋に進出しようとしたのか。そして急速に台頭する日本をどう捉えていたのか。日米同盟が転換する今こそ読まれるべき、戦略の成功と失敗の条件を学べる壮大な歴史書。日本のメディアにも登場する著者が描く大国の大戦略史。
目次
日本語版への序文
謝辞
序論
ヨーロッパか、あるいはアジアか
大陸か、あるいは海洋か──中国と日本
前方防衛線を確定する
自決権か、あるいは普遍的価値か
保護主義か、あるいは自由貿易か
本書の構成
第I部 アメリカの台頭
第1章 戦略の萌芽 一七八四─一八六〇年――「最も野心的な知性を発揮させる舞台」
「通商拡大における新しい冒険」──建国初期の広東貿易、パワーの希求、そして東インド諸島における利益
「太平洋岸における、アメリカの通商と帝国への足場」
通商・海軍・神──「明白なる運命」の時代における太平洋関与の拡大
「邪悪で誤った行動をとっているイギリス人とは対照的」──アメリカが擁護する価値と清帝国崩壊の始まり
兵士・宣教師・水夫──太平洋帝国に向けた一九世紀半ばの三つの戦略的展望
初期のアメリカのアジアに対する戦略的思考を評価する
第2章 拡張の前触れ 一八六一─一八九八年――「われわれに与えられた、この太平洋という空間の、なんと崇高なことか」
「陽が沈むところでは、帝国は台頭する」──ウィリアム・ヘンリー・スワードの戦略的重要性
「好都合な環境を維持する」──大国政治とアメリカの調停外交
「アメリカ合衆国の大いなる政府の保護」──太平洋における「踏み石」の確保
拡張の前提──海軍力、国是、財政=軍事国家
「金ぴか時代」の戦略的教訓
第3章 セオドア・ローズヴェルト時代の大戦略――「私は太平洋沿岸地域を支配するアメリカが見たい」
「われわれの最も地理的に近いところにある利益への、最も大きな脅威」──アルフレッド・セイヤー・マハンと「アジア問題」
米西戦争と「太平洋国家」としての大戦略
アメリカの「踏み石」を確保する
「国際的な道徳の力など、戯言にすぎない」──ヘイと門戸開放
ローズヴェルトと戦勝後の大国外交
太平洋の世紀の幕開けにおけるアメリカの大戦略を評価する
第II部 日本の台頭
第4章 門戸開放を定義する 一九〇九─一九二七年――「門戸を開放せよ、中国を再生せよ、そして日本を満足させよ」
「中国の繁栄をもたらす手段を提供する」──タフト大統領によるドル外交の幻想
「友好と利益の門戸」──ウッドロー・ウィルソンの理想主義的な、しかしヨーロッパ中心主義の東アジア政策
「備えるならば、嵐にも耐えられるものでなければなりません。そうでないと、いざというとき吹き飛んでしまいます」──オレンジ戦争計画という保険
「歴史上のすべての提督の戦果を足し合わせても及ばない数の戦艦を沈めた」──ワシントン条約体制
「中国における日本の利益に挑戦して戦争するなど、全く考えられない」──トーマス・ラモントの対日経済外交
ワシントン条約体制の戦略的遺産
第5章 門戸開放の終焉 一九二八─一九四一年――「相手に抵抗しないか、もしくは相手に強制するか」
ホーンベック、グルー、マクマリーの論争──太平洋地域のアメリカの利益はいかほどか
ホーンベックの場合──「われわれの政策は原則と一致している」
グルーの場合──日本との「意義のある妥協」を求めて
ほか