内容説明
売れない新人作家・柳佳夜は自作の感想を求めてエゴサに明け暮れるうち、同姓同名のVTuberを発見する。魔界への帰還を目指す吸血鬼という設定のVTuberはまたたく間に人気配信者となり、むしろ自分になりすまし疑惑がかけられ、柳はVTuberの正体を突き止めようと奔走するが――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
129
異常な状況下で追い詰められるヒロインを描いてきた著者が、初めて現代を舞台に選んだ。今作では生の前提である肉体に強い嫌悪と違和感を抱えている自分を表現したくて作家を目指すが、どんな言葉を選べばよいかわからず売れなかったところへ同姓同名のVTuberが出現し大人気になってしまう。バーチャルの世界で軽々と肉体を超越した偽者に嫉妬して暴走する姿は、暇を持て余して考えすぎた果てに思えなくもない。『東京貧困女子』に出てくる生きるのもやっとな貧しさにあえいでいたら、アイデンティティの危機など感じないのではないだろうか。2023/12/24
fwhd8325
69
終盤の数ページにこの物語のすべてが凝縮されていると思います。賛否あれど、私はこの表現は好きです。とても人間らしい姿であるように感じました。しかし、短い作品ですが、思ったよりも時間がかかり、少々手こずったことも事実です。2024/06/07
ででんでん
62
「身体にうんざりする。身体があるのは不自由すぎる。」という主人公。確かに身体があるから花粉にも反応する。ご飯も食べなきゃならないし、食べ過ぎるとそれなりの結果にもなる。病気にもなるし、睡眠、排泄…やらねばならないことばかり。でも、それが生きるということで、おいしいもの食べたり、眠い時に寝たり…身体ならではの幸せがあると素人(私)は思うが、主人公は、そうした「生きている実感」にもうんざりしている。そこに凡庸な私は共感できず、興味深く読み進めたものの、最後に「自由に」なる彼女から置いてきぼりをくらって呆然。2024/02/18
ネギっ子gen
61
【せめて、柳佳夜だけは救ってあげたかった。身体の束縛から自由にしてあげたかった】せっかく作り上げた身体を持たない存在が、別の身体を持たない存在に奪われ……。冒頭より、<湯船に浸かると、髪の毛先、乳房の先端、そして全身の毛穴から粉末くらいの小さな粒子がぽこぽこと浮かび上がり、お湯の中で広がっていく。かじかんで寒暖の区別がつかなくなりかけていた手足は、次第に温かさを取り戻していく。鼻の下ぎりぎりまで顔をお湯の中に浸け>と綴られていく記述が、実に刺さるし主人公にも甚く共鳴。わたしが10代の頃に読みたかったな。⇒2024/03/02
ぽてち
36
身体を疎ましく思う女性が主人公。彼女はツテを頼りに持ち込みでデビューした兼業作家だが、2作目が編集者に認められず苦しんでいる。そんなとき、エゴサーチで自分の筆名と同じYouTuberが注目を集めていることを知り……。自分の身体に対する疑問、不信を突き詰めるとこうなるだろうという小説だった。精神の容れ物であるとしても、身体を生かすためには様々な要求に応えなければならない矛盾や、女性であることの不合理がこれでもかと詰め込まれている。会社という組織の中でも彼女は異端だ。ラストシーンは非現実的だが受け入れられた。2024/01/08
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