内容説明
遠藤周作生誕100年企画。著者の原点となる信仰と文学について、初期の重厚な発掘原稿を収める。『沈黙』発表前の講演録「ころび切支丹」を併録。本シリーズでしか読めない貴重な作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
197
殉教の精神を虚栄心と決めつける批評家に著者は怒る。人の心を何でも虚栄やエゴで片付けてはいけない。虚栄心があるにせよ、残り40%のX(と著者は名付ける)が大事なのだと。これは近代の唯物主義や皮相な合理主義に抗って、人の心の未知の領域を探っていった遠藤さんらしい。サドやラクロを論じた章では、彼ら没落貴族が(基督教の衰退も重なって)社会的・精神的基盤を失い、自分の根っこを掴み直すために小説を書いたという。カトリック文学を論じた章は難しいが、ベルナノスやランツベルクなど読みたい作家が増えた。映画論も参考になった。2024/11/14
ネギっ子gen
54
【弱者に救いはあるか】カトリック者は、絶えず自分自身と闘わなければならない。著者が若き日に信仰と文学の軌跡を綴った、エッセイや評論を集成。本書の表題でもある『沈黙』刊行前の講演録も収録。その最後の方で、あのユダに言及している。<わたしがいつも聖書の中でひっかかってしまうのは、キリストが最後の晩餐のときに、ユダに「いけ、汝のなすところをなせ」と言っているところです。ユダが外へ出ると、「外は闇なりき」。闇というから孤独だったんですね。あれはとてもいい文章だ。外は闇なりきというユダの孤独がとても出ている>と。⇒2023/11/08
bigdad
0
☆☆☆2023/10/13