内容説明
誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望(のぞむ)はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなる――。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望(きぼう)」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。(解説・山中真理)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪
63
失踪した弟、希望の行方を捜すミステリーかと思って読み始めたが、希望に関わった人たちを通して彼そのものがどんな人間だったのかを見つめ直す物語だった。静かな、不思議な余韻を残す、寺地さんの中ではとても好きな作品。書き下ろし短編で希望のその後も知ることができて良かった。2024/05/15
みこちゃん
58
突然姿を消した弟、希望を探してと母親に頼まれた誠実。歪な家族関係の中で、誠実は見たくないものは見ずにやり過ごす術を身につけた。希望は全てを受け入れることで、意図せず自分の立ち位置を見出そうとしたのか。希望は仕事で出会った年上女性と逃げていることが判明。希望はなぜ姿を消したのか?本来の自分を押し殺してい続ける場所にしがみつく必要はない。それがたとえ家族であっても。最後は希望が自分の苦手なことと向き合って克服しようとする姿が確認できてホッとした。いい人でいることに拘らず、自分らしくいられる場所が何より大事。2024/06/08
おうち時間
45
父親から母親へのDVが日常的に行われている家庭で育つとやはりこの柳瀬兄弟みたいな性格になってしまうのかもしれない。兄である誠実は見て見ぬふりが得意。見なかったことはなかったことに出来ると思っている。一方弟の希望は相手の要求を何でも「いいですよ」と受け入れてしまう。でも放火犯かもしれない女性に一緒に逃げてと言われて手を取り合って逃げるのはちょっと度を越してるかな。文庫化するにあたり書き下ろした短編を読んで希望の前向きな姿を見られたのは良かった。性格て簡単には変えられないけれど変えたいという気持ちはわかるな。2024/04/16
ぽろん
42
登場する人達、みんな痛いなあ。失踪した弟を探す兄。弟を探すなかで、自分探しも出来たようだ。ラストは、それぞれ自分を取り戻せそうな予感が感じられたが、、、。生きるってしんどいなあ。2024/05/01
Karl Heintz Schneider
37
誰からも愛される自慢の弟・希望(のぞむ)が、ある日突然失踪した。兄の誠実(まさみ)はそのゆくえを追うが、その過程で弟の真の姿を知ることに。一話終わるごとに様々な人物が希望のことについて語り始める。ところが語り手によって印象が全然違い、戸惑う誠実。すぐ近くで生活してきた家族なのに見えていないことのなんと多いことか。近くにいるからこそ見えない、もしくは見ようとしないことってあると思う。この本はそんな家族の在り方を突き付けてくる。決して他人ごとではなく、考えさせられる一冊だった。2024/07/14
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