内容説明
1960年代のデビュー以来、数々のヒット作を世に送り出してきたマンガ家・里中満智子。近年は自らの創作のみならず、日本マンガ界を牽引する立場としての活動も高く評価され、文化功労者にも選出された。
「すべてのマンガ文化を守りたい」との想いを胸に走り続けてきた75年の半生を自ら振り返り、幼少期から現代、そして未来への展望までを綴る。
高校生にしてプロの漫画家デビューを果たした著者だが、決して順風満帆ではなく、ジェンダーギャップで叱責をあびたり、読者からの抗議を受けたり、がんを患ったり、まるで朝ドラを見ているような半生が、これでもかと詰められている。顔の広かった著者ならではの、レジェンドのマンガ家たちとのやりとりも、多数収録。
当時を知る人には共感を、当時を知らない世代には新しい発見をもたらす1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
38
里中満智子の自叙伝なのだが、時系列ではなく、テーマ別に語っていて、それが自伝という枠を心地よく崩している。漫画に関する想いなどが綴られ、生い立ちを知る以上に、そこから里中の人柄が伝わってくるのだ。高校生の頃にデビューした早咲きゆえの苦労なども紹介されているが（にしても、デビュー時の里中の絵のうまさには舌を巻く）、最初から一貫して、いわゆる少女漫画のステレオタイプの主人公ではなく、考え、選択し、実行するヒロインを描いてきたのが彼女の凄さだ（里中は『鉄腕アトム』に魅せられるのだが、（つづく）2024/02/13
nonpono
32
漫画の成長期、16歳でデビューした里中先生、才能はもちろんだが、どんなに当時の女の子達に夢を与えていたのだろうか。かわいいだけじゃなく、泣いてばかりではない、「凛とした」ヒロインをたくさん描いてくれた。万葉集、持統天皇が主人公の「天上の虹」を読み、ゼミで「万葉集」を専攻し挫折した。だけど今ならより万葉集の短歌の良さを肩の力を抜いて楽しめる。古典への誘いは先生のお陰である。また、先生の大英博物館、エジプト、ドイツの旅の話も興味深い。納得がいくまで調べること、芸術に触れることの素晴らしさをまた教えてくれた。2024/08/07
スリカータ
13
里中満智子さんの漫画は「千夜一夜」を持っている。16頁完結のショートショートだが、一つ一つのテーマ性と多彩な背景が際立ち、印象深かった。里中さんは16歳でプロになったが、幼少の頃から身体が大きく、知的で家事も出来て早熟だった。デビュー作の画力も完成度が高く、驚く。里中さんが子供時代から愛した巨匠たちへの想いや自作代表作の振り返りなど、とても興味深い。病気で手術を5回経験されており、売れっ子漫画家の過酷さを感じた。自叙伝を出されると遂に漫画家引退かと気になる。まだまだご活躍して欲しい。2024/02/23
ときわ
10
私は里中満智子さんのデビューをリアルタイムで知っている。当時若くして漫画家デビューする人がいきなり増えた感じだった。その後仕事に忙殺され、この方たちに社会経験を積む時間はあるのだろうか？なんてお節介な心配をしたが、めちゃくちゃ忙しいのにすごくしっかり大人の社会人と対峙していて、なんてすごい人だと感動した。副題の凛としたヒロインはご本人そのものだ。自分の作品だけでなく漫画界全体を引っ張ってきている。テレビでお見掛けすることもあるのはそういう考えに基づいていたのか！病気を何度もされているとは知らなかった。2024/02/25
アルパカ
9
高校ではアルバイトが禁止で今までは黙認してきたが高校三年の一年は漫画の仕事を休んでほしい、と言われ、中退した話。一年も漫画を描くのをやめたらこの世界では忘れられてしまう、とそうせざるをえなかった。学校側の対応はひどい、もっと何とかならなかったのかと思ってしまいました。女性が自分で人生を切り開いていく様を描いてきたこと。歴史ものが好きなこと。漫画家同士でよく情報交換をしたこと。大阪芸大で授業をしていることなど漫画愛にあふれた内容でした。5回も手術をされているのはあまりにも働きすぎだからじゃないかと思います。2025/05/06
