内容説明
ロリィタ、お姫様、妖精のドレス、少年装、幻獣のような髪、メイク……
世界と人間に絶望した著者が、ロリィタと出会い「自分らしく装う」ことに目覚めて、本来の姿を取り戻すまで。
気鋭の歌人・小説家、川野芽生が「装いと解放」を綴る、初のエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カフカ
58
歌人・小説家である川野芽生さんのエッセイ。 川野さんの描く小説や短歌が好きなのだが、これを読んでまた生き様も好きだなと感じた。すべて自分の生きたいように全力で生きている感じが格好いい。 感銘を受けた一文→“とある有名なビジネスマンが、毎日同じ服ばかり着ることによって、思考のリソースを装いに割かず に済むようにしていると発言していたのはよく知られた話である。私は結果的に、それとは正反対の戦略で生きている。すなわち、装いについて大いに悩むことで、他の悩みを忘却するのである。“→2024/01/27
pohcho
55
歌人・小説家のエッセイ。アロマンティックアセクシャルの著者。まだそんな言葉が知られていなかった頃、美しく装うことが大好きだった女の子は綺麗だからといじめられ、男性に強引に言い寄られて、さんざん嫌な目にあってきた。そんな彼女を解放したのはロリータファッション。誰のためでもなく、自分のために装うことの素晴らしさ。その他、髪の色やメイク、ランジェリーなど装うことへの愛が書かれていて、とても興味深く読む。英国のトールキン2019への旅も楽しそう。いつか芥川賞の授賞式にド派手なドレスで出てきてほしい。とてもよかった2024/02/15
livre_film2020
43
完全に今どハマりしている作家・歌人の初のエッセイ集。過去作品の裏話や、人生(性暴力含む)、考え方が詰まっている。こんなことを書くと烏滸がましいが、私もほとんど同じ人生を辿ってきた。違うのは東大生ではないことやロリィタには興味がないことだろうか。男性からの欲望の対象として見られ、「清楚」であることが望まれる「女性」。美人であることを良しとするくせに「美人という自覚は持つな」というダブルスタンダードなこの社会。ほんと、そうなの!!!と頷くことがなんと多かったことか。川野さんが存在する限り息ができる気がする。2024/03/02
いちろく
24
昨年、著者の小説に出会った時に独特で幻想的な世界観に驚くと共に、正直上手く飲み込めなかった。他の小説も手にしたけれど、結局は同様。勿論、原因は私にある。それでも、惹かれる作品もあり、気に入った作品もあった。魅せられたのだろう。著者の思考の一端にでも触れられたらと、手にした本書。余計に混乱した部分もある一方で、今一度小説を読み直したら前回よりは少しは違った見方も出来るのでは? とも。私には、そんなエッセイだった。2024/01/12
R子
19
装いに纏わるエッセイ集。衣服やメイクだけでなく、身体や声、性についても。お姫様や妖精への憧れ、可愛い装いと恋愛指向・性的指向とを結びつけて考えることへの違和感、身体の消滅を願っている等、自身の考えを率直に語っていて励まされるような気持ちになった。どう生きていきたいかを主張し、掴み取る姿勢はとても大切だと改めて思う。また、“美しい”と感じるときの搾取、加害性についての視点が私にはなかったので考えさせられた。2024/03/17