内容説明
両親と死別して孤児になったピップは,姉とその夫・鍛冶屋のジョーと暮らしていた.ある日.墓地で脱走囚と出会い頼まれた食料を家から持ちだした.成長して鍛冶屋修業を始めたピップに,匿名の人物から巨額の遺産が贈られるという知らせが届き,紳士修業のためロンドンに旅立つ.晩年の代表作.アメリカ版の挿絵を収録.(全2冊)
目次
主な登場人物
地図(『大いなる遺産』の湿原、一八二〇年代のロンドン、ピップのロチェスター)
第一部
第二部
ディケンズの生涯(石塚裕子)
挿絵=ジョン・マクレナン
(『ハーバーズ・ウィークリー』一八六〇年十一月二十四日~一八六一年八月三日)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
石塚裕子さんの訳で再読。ジョーが本当にいい人で、こんな大人がそばに一人いてくれたら、あとは全て相殺にしてもいいんじゃないかと思う。すべての子供にジョーがいたらいいのに。以前に読んだ時には気の毒に思えたミスハビシャムの歪んだ心が、それがエステルに及ぼす影響に嫌悪感を覚えた。そして、ジャガール法律事務所のウェミックさんにも心が揺さぶられた。こういう人達、それぞれについて、あなたはどう判断しますか?と、ディケンズに問いかけられているように思う。訳は隅々まで工夫されているような印象。読みやすく、楽しい。2020/09/05
Willie the Wildcat
66
愛情の天秤。欲の有無が、”錘”となり言動にブレ。ジョーとビディの不変の姿勢に対するピップの心情描写と変化は、人生を学ぶ課程とも言える。ビディの諭しに気づけない盲目のピップが象徴。脱獄囚人の変化の成り行きも今後の見所。一方、ミス・ハヴィシャムの不変は、他者の人生の操作。意味深な言動には、過去への報復の念か。暗澹たる気分。但し、サチス荘、破れた心臓など、婦人の心の痛みの理解がカギという気もする。喧嘩を仕掛けたハーバートや、家政婦モリーの存在も気になるところ。因みに、タール水の迷信は知らなかった。2016/03/19
藤月はな(灯れ松明の火)
65
姉にどやしつけられながらも気の良いジョーと仲良く、暮らしていたピップ。幼き彼に起きた二つの出来事は逃亡中の囚人を助けた事と、貴族とお近づきになる機会があった事。だけど、見知らぬ人物から遺産を譲られた事で彼の運命が大きく、変わり・・・。財産の有無で手の平を返す親戚達に苦笑しつつもピップに恥と希望を植え付けて愉しむハヴィシャムとエステルは貴族の質の悪い戯れとしか思えない。それにしても212頁のエステルの顔はなんて底意地の悪い顔をしているんだろう!人間不信が募る中、ジョーの純粋さとハーバート君の友情の篤さが救い2025/12/14
syaori
62
両親と死別し、姉夫婦に養育されるピップ少年が主人公。義兄の徒弟になって鍛冶屋となる運命の彼の野望は、「ジェントルマン」になること。現在より階級が厳然としていた時代。労働者がジェントルマンになるなんて夢のまた夢。なすすべもなく鍛冶屋への道を歩んでいた彼ですが、突然「莫大な遺産相続」の話が舞い込んでジェントルマンへの道が開けることに。夢と現実、かつての境遇と前途の間に葛藤を抱えつつ進む彼から目が離せません。また彼に遺産を贈与してくれる恩人とは誰なのか。周りを固める一癖も二癖もある人々にも目を奪われつつ次巻へ。2020/01/28
Miyoshi Hirotaka
33
19世紀半ばの英国は超格差社会。生まれが逆転困難な人生の決定要因。一方で、植民地とのビッグビジネスが野心家の事業欲を刺激していた。主人公は孤児。鍛冶屋に嫁いだ姉に育てられたが、年季奉公が始まる歳に届いた匿名の資産家からの遺産相続の知らせにより人生が一変。周囲の態度の変化に戸惑いながらも紳士修行のためにロンドンへと旅立つ。紳士候補は自分だけではないこと、他に美しい資産家の養女も淑女となる教育を受けてきたことを知る。人間関係の変化、美女との恋。固定化した社会に意図的な変化が起きそうな期待を持たせ下巻へと続く。2025/07/30




