内容説明
大手銀行に勤める41歳の安達は、無差別大量殺傷事件のニュースに衝撃を受ける。40人近くを襲ってその場で焼身自殺した男が、小学校時代の同級生だったのだ。あの頃、俺はあいつに取り返しのつかない過ちを犯した。この事件は、俺の「罪」なのか――。懊悩する安達は、凶行の原点を求めて犯人の人生を辿っていく。彼の壮絶な怒りと絶望を知った安達が、最後に見た景色とは。誰の心にも兆す“悪”に鋭く切り込んだ、傑作長編ミステリ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
144
★★★★★★★☆☆☆罪の起源にフォーカスした貫井徳郎の社会派ミステリ。日本中を震撼させた無差別大量殺人。犯行後に自殺した犯人が小学校の同級生であることを知った安達は、自身の過去のいじめが全ての元凶ではないかと疑い始め…。一つの疑念から精神を病み追究に駆り立てられる安達の心理描写がリアルで、ネット社会の怖さも生々しい。惜しむらくは、物語に深みを与えていた真壁・亀谷・厚子のエピソードが宙に浮いてしまったこと。視点人物としてエキストラ以上の役割を課すなら、彼らの心に芽生えたであろう〝その先〟も描いて欲しかった。2024/08/08
まさきち
102
かつて小学校時代の同級生にいじめられるきっかけを与え、不登校にさせててしまった主人公。彼がアニコン会場で発生した無差別殺人の犯人がかつての同級生だと知り、その原因は自分が作ってしまったのではと悩み、犯人の関係者達に会って事の真相の追求を行っていく。比較的典型的な話の流れの中で、各登場人物のキャラに好感を持てなかったが、そのほとんどが何らかのきっかけを掴んで前向きな方向へすすんでいく。その点に救われたような一冊でした。2024/06/24
yukaring
72
子供の頃に何気なく言ったことがもし大事件の引き金になったら?たくさんのファンが詰めかけるアニコン会場で起こった無差別の連続殺傷事件。死者8名、重軽傷者30数名を出したこの犯人は自らも焼身自殺を遂げる。この犯人が小学校の同級生だったことを知り安達は衝撃を受ける。子供の頃に彼・斎木が虐められるきっかけとなったのは安達のひと言だったのだ。何が斎木をこのような凶行に駆り立てたのか?自責の念から犯人・斎木の人生を辿る安達。そしてたどり着いたのは斎木の抱えていた怒りと絶望。誰しもある心の闇に切り込んだ社会派ミステリ。2024/03/18
鍵ちゃん
59
大手銀行に勤める41歳の安達は、無差別大量殺傷事件のニュースに衝撃を受ける。40人近くを襲ってその場で焼身自殺した男が、小学校時代の同級生だったのだ。あの頃、俺はあいつに取り返しのつかない過ちを犯した。この事件は、俺の罪なのか。懊悩する安達は、凶行の原点を求めて犯人の人生を辿っていく。彼の壮絶な怒りと絶望を知った安達が、最後に見た景色とは。なんだか胸糞悪い感じがする。SNSの恐怖、社会の底辺、イジメ。それらの問題を濃縮している。それに直面した安達が苦しい。2025/06/09
GAKU
55
こんな世の中だからこそ他人を思いやり、困っている人がいたら手を差し伸べる。そんな気持ちを忘れてはいけないと、あらためて気付かされた作品でした。ただ理由はどうであれ、斎木の犯した罪は赦されるものではない。2024/04/21