内容説明
第34回三島由紀夫賞、第37回坪田譲治文学賞、ダブル受賞!
中学入学を前にしたサッカー少女と、小説家の叔父。
2020年、コロナ禍で予定がなくなった春休み、
ふたりは利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。
ロード・ノベルの傑作! 第164回芥川賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
192
サッカー少女の亜美(あび)と小説家の叔父。時はコロナ禍、二人は利根川沿いを徒歩で鹿島アントラーズの本拠地まで約一週間の旅に出る。亜美はドリブルとリフティングの練習、叔父は風景を文での描写の修練。自然、野鳥を愛でながら歩く。旅には出会いはつきもの。大学生のみどりさんと出会い、一緒に旅することになり、旅は道連れ世は情けという言葉が頭に浮かぶ。三人の間に必然と絆が生まれ、改めて旅の素晴らしさを実感。行ったことない場所なのに、共に旅をして自分の心の中に、はっきり思い出として残るような物語だった。2024/08/03
ちょろこ
120
あぁ、なんてことだろう…の一冊。小説家の叔父とサッカーひとすじの姪っ子の徒歩での旅物語。我孫子から利根川沿いに鹿島まで。歩いて、蹴って、書いて…淡々と紡がれる時間は情景が手に取るようにわかるだけに共に旅するような気分。屈託のない、姪っ子の亜美ちゃんと叔父の距離感も心地よかった。道中でのサッカーが結んだともいえる素敵な縁がそれぞれの心に彩りを添えていくさまはうるッとくるほど。でもそれは序の口だった。最後に全て心を涙で覆われた。なんてことだろう…。全て理解した上での再読は苦しくてできそうにない。今を大切に…。2024/12/07
はっせー
63
旅が好きな人におすすめしたい本になっている!2020年3月ごろ皆さんはなにをしていましたか?私は就活生だった。会社説明会を聞きながらこれからどうなるんだろうという漠然とした不安を抱えていた。そんな3月を舞台にした小説。主人公の亜美とその叔父は鹿島アントラーズの試合を見に行こうとしたが新型コロナウイルスの影響で中止。しかし2人は代替え案として歩いて鹿島まで行くことに。読み終わってあのときの恐怖は黒というより白だったと思い出した。清潔で完璧をイメージする白。その白によって他の色が塗りつぶされた気がした。2024/04/18
tenori
62
コロナ禍初期。作家の叔父とサッカー好きな姪が、それぞれに「書くこと」「蹴ること」の練習をしながら千葉県我孫子市から茨城県鹿島市まで利根川沿いを徒歩紀行する静かなロードノベル。植物や鳥の生態、地層や野仏の姿、偶然に出逢った女子大生との交流により、ゴールまでの数日で学びを得ていくのだが。最期の一頁で単なる回想録に留まらない事実が明かされる。人生は川の流れの如し。支流は本流を作り、本流が海を作る終わりのない旅。途上の出来事は生きるための練習だ。何かを引き受けるのではなく、記憶の中に痛みをもって刻むことだ。2024/03/29
Nao Funasoko
50
冒頭の手賀沼や鳥の博物館周辺は私自身時折バードウォッチングで出かける場所なので景色も想像つくので出だしから引きこまれる。 鳥や自然、ジーコ、柳田民俗学などのエピソードや引用も同じく興味が被る。小説家の叔父さんとサッカー少女の姪。 それぞれの旅する練習は心の旅でもあった。そして、予想もしえないエピローグに心震わす。時間と距離、生と死に思いを馳せずにはいられないコロナ禍文学。2024/02/15
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