内容説明
日本社会に対する「警告の書」。
公安調査庁は警察や防衛省の情報機関と比べて、ヒトもカネも乏しく、武器すら持たない。そんな最小・最弱の組織に入庁してしまったマンガオタク青年の梶壮太が、ある日のジョギング中、偶然目にした看板から国際諜報戦線に足を踏み入れることに。“ミス・ロレンス”こと西海帆稀とともに、神戸に暗躍する謎のウクライナ人を追跡する――
〈インテリジェンスにあまりに無頓着だった日本社会に対する「警告の書」として本書を読むべきだろう〉――ジャーナリスト・後藤謙次氏(解説)
【「ウルトラ・ダラー」シリーズ・スピンオフ】
※この作品は単行本版『鳴かずのカッコウ』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Sakie
17
こんな世界があることを、一般の私たちは意識して生活していない。だけどあるんだなあ、と手嶋さんの小説を読むたび思い出す。『インテリジェンスとは、国家が生き残るための選り抜かれた情報だ。どんなに小さな国も、国家が生き抜くにはインテリジェンス機関は欠かせない』。ただ表面化した犯罪を追うだけでは掴み切れない、他国の思惑や企みをあぶり出す任務。今回は船舶の売買を軸にワールドワイドな頭脳戦が繰り広げられる。ウクライナの空母ワリャーグを中国が買った、それが空母遼寧。裏事情のほのめかしに、どこまで真実かとわくわくした。2024/10/04
Hideo Itoh
6
NHKの海外特派員として、TV画面越しによくお目にかかっていた方だ。その報道マン、ジャーナリストとしての経歴が長いので、どうしても小説というよりも、報道番組のレポートという感じがして、読みやすさという点ではちょっとマイナスかな。公安調査庁、各国のインテリジェンスの活動とか、今までほぼ耳にいたことのない「裏」の世界の話はなかなかおもしろかっただけに、もう少し文体がこなれてくるともっとおもしろくなるだろうなぁ。期待を込めて、上からちょっと偉そうなことをつぶやいてみた(汗)。2024/06/05
yuuguren
6
公安調査庁というマイナーな組織が舞台で、主人公の梶壮太の入庁以後の活動、活躍が展開される。米・中・イギリス・北朝鮮・ウクライナ他などが絡む国際的インテリジェンスの世界での話というと派手な感じだが、実際は地道な情報集めが業務の主体だ。しかし、身分を偽っての潜入や追跡捜査もあり、一般人には非日常的な仕事でありその意味で楽しく読めた。2024/03/02
kotori
5
予想だにしない展開。こんな裏の世界があるのかと思うと怖いけど、現実の世界も当たらずといえども遠からずなのではと思ってしまった。ドキドキの展開ながら、お茶や和歌の話が盛り込まれていたり、神戸の街並みが想像できる描写だったりで、一気に引き込まれて最後まで読んでしまいました。同じ作者の他の本も読んでみたい。2024/01/13
冬薔薇
4
「英国諜報界の吟遊詩人」スティーブン・ブラッドレーのスピンオフ作品。今回は神戸公安調査庁の梶壮太を軸に中国のシナリオに翻弄される、情報経済戦。神戸を舞台にミスタージミーとミスロレンスの活躍。娘の病につけ込まれ思いもよらぬ人生を送るリヴィウの船舶技術者、非常な情報戦に取り込まれる。リアルな題材が盛り込まれ面白い。この本を読んでいなければ気付かなかった今日の記事。パナマ運河通過前に摘発された北朝鮮の船舶、その時のキューバ大使館参事官が去年韓国に亡命していたとは。2024/07/17




