内容説明
過去1000年間、技術革新は労働者にほとんど恩恵をもたらさず、ごく一部の資本家や権力者だけを豊かにする傾向にあった。そして現在、AI技術の急速な進展があらゆる職域に自動化の波をもたらし、雇用の崩壊が叫ばれている。歴史の悲劇が、ここでも繰り返されるのだろうか? だが、常にそうだったわけではない。第二次世界大戦後の数十年間、アメリカをはじめとする工業国は目覚ましい経済成長を遂げ、教育と医療の普及、平均寿命の延伸、労働環境の改善などの厚生は多くの人々に共有されていた。両者を分ける条件とはなにか。テクノロジーの進む方向性を転換させ、社会全体の広範な繁栄を実現するための方策とは。当代随一の経済学者アセモグルがMITでの共同研究の成果を注ぎ込んだ決定的著作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あらたん
64
テクノロジーの進展による利益はときの権力者に集まる傾向にあるけれど、社会制度や政治の努力によってはそれを変えられることができる。 現在のAI革命はそこそこの自動化と民衆の監視に使われていて、全員の利益にはなっていない。 労働者も含めて社会全体に利益が行き渡るよう政策を変えていかないといけない 理解したのはこんなところ。全体としてピケティやハラリを思い出しながら読んだ。2025/06/29
姉勤
38
科学技術が進むほど、大多数の人類は損耗し格差は拡大する。下巻は主に戦中戦後のアメリカの大量生産による社会の変質と、人間の低価値化の推移を。上巻から10章を費やして綴ってきたが、著者が変わったのかと思うほど、最終章でお花畑な理想論が展開する。日本ほか、高度成長期の富の分配と技術発展の相乗を成功例のサンプルとして取り上げているが、現在の我が国の腐敗具合を見ても、不可逆な二重国家化の未来が見えてくる。情報支配からの思考の支配を可能にする従来のメディアと桁違いなAIとネットワークを人類は手に入れつつある。2025/05/31
塩崎ツトム
26
「東京都同情塔」でも書かれていたことだけど、社会的成功者の「わたしは未来が見える・わかる」っていうのは自分の理想を社会に押し付けるだけの政治的権力を持っているというだけで、そういう社会を牽引させる人間にだけテックの恩恵を受けさせると、結果的に大多数の庶民は搾取されるだけというのは上巻でも書いた通り。そしてAI技術はそういう経営者の大言壮語とは裏腹にぼくらの生活を良くはしてくれない。もうボトムアップ式・民主主義式に「この道以外にもある」と、社会の進む方向を変えないといけない。2024/02/29
紅咲文庫
25
読み応えずっしりで咀嚼するのに10年くらいかかりそう。どんな技術も企業まかせにしては労働者のために使われない、労働者団体と企業の交渉があってはじめて、人のために使われる技術へと方向づけることができる。すでにちょっと遅いかもしれないけど(第10章 民主主義の崩壊)、こういう方法があるのだ(第11章 テクノロジーの方向転換)というところまで読めてよかった。以下はメモ■1900年代後半の経済成長は労働者組織と共に発展した。機械導入時には既にいる労働者は新しい機械の扱いを自分たちに教えることを求め、①2024/03/02
さとうしん
14
下巻の射程範囲は20世紀から現代まで。19世紀末から戦後まで経済成長の恩恵が下々にまで及ぼされ、下層階級もそれなりに豊かな生活を送ることができたのは、企業に対する世論の高まりと労働組合などの対抗勢力の活動が活発だったからである。しかしデジタル・テクノロジーの発展、特にAIの登場によりそれも怪しくなってきた……という主旨だと思う。歴史の話と思わせてといて現在、そして未来の話の比重が大きいという作りは『サピエンス全史』と共通している。結論としてはやはり声を上げ続けることが大事ということになるだろうか。2024/02/10
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